第136話 お茶会始まらず。

「リョウくん、すまない!君に使用人の真似をさせるなんて!」

「かまいませんよ、ただ、あの二人は斬っていいんですか?」

「良くないからね、リョウくんホントに日本で育ったの?」

「爺さんの教えです。敵対するものは斬れと。」

「リョウくん、もっと文化人になりなさい。君のお爺さんは生きてる時代が違っているからね。」

「一応、俺は今を生きてると思うのですが?」

「今の人は人を斬る事を考えたりしないよ。」

「悪、即、斬は剣士の嗜みと教わったのですが?」

「間違っているからね。おばあさまが心配なされるわけだ。」

「そうだったのか!俺が剣士になれてないから許可されてないだけかと思ってた。」

「剣士になるってなに?」

「爺さん曰く、剣士になるためには真剣を使った立ち会いで十回勝つ必要があると。それで俺はまだ六回しか勝ててないから剣士を名乗れないと。」

「そんな事はないからね、そもそも、現代日本に剣士はいないよ。」

「いますよ、爺さんの知り合いに剣士の方がいましたから。」

「いるの!」

「はい。しかし、ソウエンさんにお世話になっている身、斬るのは止めておきましょう。」

「頼むよ、私のお茶席で刃傷沙汰は止めてくれよ。」

「努力します。」


「お父様、皆様お集まりになり、準備ができました。」

「わかった、さあリョウくん向かおうか。」

「はい」

「サエ、落ち着いてやればいいからね。」

「は、はい。でも、緊張します。」

「お父さんがちゃんとフォローするし、正客はキミツグさんだ。失敗しても許してくれるから堂々としたらいいんだよ。」

「はい。」

「ソウエンさん、今日お茶を点てるのはもしかしてサエちゃん?」

「そうだよリョウくん、サエは今日初めて亭主を務めるんだ、それで緊張しているんだけど、一緒に練習していたリョウくんにも見てほしくてね。」

「なるほど、サエちゃん。じっくり見してもらうからね。」

「あ、あまり見ないでください。恥ずかしいですし・・・」

「いやいや、俺も初めての事だからね。」

「はい、ふつつか者ですが、よろしくお願いします。」

「君たちなんでそんな言い方かな?」

「えっ?なにが?」

「いや、わからないならいいんだ。それより中にはいるよ。」


俺達三人は茶室に入った。

「本日は皆様お忙しい中お集まりくださいまして誠にありがとうございます。本日は娘サエの初めましての亭主でございます。未熟な部分もあると思いますがご容赦のほどを。さあ、サエ挨拶を。」

「先程父に紹介されました、土御門サエと申します。本日は未熟者ながら精一杯亭主を務めさせていただきますのでよろしくお願いいたします。」

茶室の人から拍手が起きる。


「なんだ、未熟者がワシに茶を出すだと!ふざけたことは言わないでもらおう。ソウエンさん、あんたが点ててくれ!」

その言葉に正客であったキミツグさんが反論する。

「和田さん、それは失礼ではないか?今日はサエちゃんの為に内々に開かれた席だ、無理矢理参加した君が口を挟むのは間違っているよ。」

「なんだと!ワシを誰だと思っている。」

「たかが府議だろ?君こそ私を誰だと思っているのだね?」

「ぐっ!」

二人を取り持つように外山がなだめる。

「まあまあ、一条さん、そんなに怒らないで、和田さんも押さえてください。」

二人はしぶしぶ、もめるのを止めた。

「あ、あの、初めてよろしいでしょうか?」

「もちろんだとも、これは私が失礼したね。」

キミツグさんはサエに向きなおし、謝罪をした。

和田はブスッと不機嫌そうにしたままだった。




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