第89話 エミリーの恋心

そこにアズサが現れる、

「エミリーちゃん、いらっしゃい。あっ、これは、レオンおじさま、遥々お越しください歓迎いたしますわ。」

「アズサ、しばらく見ないうちに綺麗になったね。これならいつでもお嫁にいけるね。」

「ありがとうございます。お相手がその気になってくれれば、今すぐでもお嫁に行きたいのですけどね。」

「さっきヨシナリから聞いたけど、苦労してるみたいだね。」

「いえ、いいんです。私を知ってもらう時間だと思えば、それに日々楽しいですしね。」

にこやかに笑うアズサは美しかった。

「アズサお姉ちゃん!リョウがお姉ちゃんのてホント?」

「エミリーちゃん、リョウくん知ってるの?」

「アントの飼い主でしょ?宮島で会ったよ。」

「リョウくん、何してるんだろう・・・」

知らないうちに女の子と知り合ってるリョウに頭を抱えた。


「ねえ、リョウに会わして!」

「どうしたのエミリーちゃん?」

「私もう一度リョウに会って確かめたいの!」

笑顔をひきつらせながら、アズサは聞く。

「エミリーちゃん、何を確かめたいの?」

「私ね、リョウと別れてから胸の奥がチクチクするの。それがずっと気になって仕方ないの。ねえ、お願いします。リョウに会わせてください。」

エミリーは深々頭を下げる。

「会わすのはいいけど、その想いは忘れたほうがいいと思うな。」

「この想いを忘れたら一生後悔する気がするの。お願い、アズサお姉ちゃん。」

「うーん、リョウが会っていいって言ったらね。」

「ありがとう、お姉ちゃん」

エミリーはアズサに抱きつく。

嬉しそうなエミリーとは別にアズサは苦笑いが出ていた。

そんな中、

ふとアントが邸宅の入口に向かい歩きだす


「アントくん元気か?ってあれ?なんでみんな外にいるの?」

リョウが仕事終わりにアズサの家に来た。

「リョウくん、何でこのタイミングで来るかな?」

「アズちゃん?なんかまずかった?アントくんがおとなしくやってるか気になって来たんだけど。」

「アントくんは誰かさんよりお利口にしてますよ、それより、宮島で女の子をナンパしたの?」

「ナンパ?してないけど、どうしたの?」

「お兄さん!」

エミリーはリョウに抱きついた。

「あっ!」

アズサが止める間もなかった、

「うん?あれ、宮島で会った外人さんだ。」

「お兄さん、私ねエミリーっていうの。」

「エミリーちゃんね、ってあれ?何でアズちゃんの家にいるの?」

「リョウくん、エミリーちゃんはイギリスのバーク財閥の当主レオンさんの娘さんです、その繋がりで源家にも何回も来ているのですが、まさかリョウくんが知り合いになってるとは思いませんでした。」

「たまたまだよ、アントくんと写真が撮りたかったんだよね。」

「うん、おかげでいい写真が撮れてたよ。」

抱きついて離れないエミリーの頭を無意識に撫でていた。

「う、うらやましいです。」

「アズちゃんなに?」

アズサは不機嫌そうに。

「何でもないです!でも、リョウくん!小さな女の子をなで回すのはどうかと思いますよ?」

「うん?あっ、ごめんねエミリーちゃん。」

「ううん、もっと撫でて欲しいな。」

エミリーは顔を擦り寄せ、甘えてくる。

「エミリーちゃん、離れてください。女の子がそんな事をしちゃいけません。」

アズサは引き離そうとする。


父親二人は離れた所から娘を見ていた。

「ヨシナリ、娘が女の顔になってる!」

「レオン、諦めろ。女の成長は早いと言うことだ。」

「そ、そんなぁ~この前までパパのお嫁さんになるって言ってたのに・・・」

「忘れろ、アズサも十二でリョウと知り合ってからは女になってたよ。」

「エミリーはまだ十歳だよ、まだ早すぎるよ。」

「リョウに会ったのが運の尽きだ。」

「いや、僕は諦めたりしない!行ってくる。」

レオンはリョウの元に向かった。

「リョウくん、ちょっといいかな?」

「あっ、レオンさんお久しぶりです。」

「うん、宮島では世話になったね。所でうちの娘をそろそろ返してくれないかな?」

「これは失礼しました。エミリーちゃん離れて。」

「いや!」

「いや、じゃなくてお父さんがきたよ。」

エミリーはレオンのほうを見た後、

「リョウがいい!邪魔するお父さんなんかキライ!」

「ぐはっ!」

レオンの心に大きなキズが入る。

「コラ、お父さんに失礼だろ。ほらちゃんと立ってお父さんに謝ろ。」

「うん、リョウが言うなら・・・お父さん酷い事言ってごめんなさい。」

「うう、娘が取られてしまった・・・」

レオンさんは膝から崩れ落ち動かなくなった。

「レオンさん大丈夫ですか?」

「あーリョウくん、レオンの面倒は俺が見るからアズサを連れて中に入ってなさい。今日は夕食は食べていってくれるのだろ?」

「あーわかりました。ご馳走になります。アズちゃん、エミリーちゃん行こうか。」

二人を連れて部屋に向かう。


「レオン、わかっただろ?娘はな、男に盗られるものだよ。」

「ヨシナリ!」

レオンは泣きながらヨシナリに抱きついていた。

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