第88話 源家に客人

源家に客人が訪れていた。

イギリスの富豪にしてバーク財閥の主、レオン、バークがヨシナリを訪ねてきていた。

「久し振りだな、ヨシナリ。元気そうでよかった。」

「レオン、お前は今回は何の予定で来日だ?」

「家族サービス♪・・・といいたいが疫病の新薬の話を聞くのと、いくつかの契約の為だな。」

「あー、あれか。お前の所に話が回ったんだったな。」

「ああ、しかし、なぜ日本の企業は支援しなかったんだ?」

「うーん、個人的に色々あってな。変にこじれて支援出来ない感じになったんだ。」

「変な話だが、おかげでいい契約になりそうだよ。」

「まあ、それはいいんだが。それより、エミリーちゃんはどうした?」

「入り口までは一緒にきたんだが、なぜか庭に走って行ったよ。」

「元気な娘だな、今日はアズサもいるから今頃相手をしているだろう。」

ヨシナリはふと窓の外を見る。

そこには鹿にまたがるエミリーの姿があった。

「君の娘は鹿に乗るクセでもあるのかね?」

「鹿?そんなクセはないが?」

レオンも窓の外を見る。

「しかー!なんで乗ってるの?ヨシナリーお前が飼ってる鹿は乗って大丈夫なのか?」

「俺も知らん!人から預かってるだけだ。」

二人の父親は慌てて庭に行く。

「エミリー!大丈夫か?」

「あっ!お父さん、見てーアントくんだよ。」

「アント?宮島で観光客が手懐けていた鹿か?」

「うん♪」

「いやいや、それはないだろ。似ている気はするけど違う鹿じゃないか?」

「でも、アントって呼んだら、反応してくれたよ。」

「ホントに?」

「エミリーちゃんはアントを知ってるのか?」

ヨシナリはエミリーに訪ねる。

「うん、宮島でお兄さんが一緒に写真とってくれたよ。」

「そ、そうか。この鹿はそのお兄さんを追って東京にきたみたいだよ。」

「ヨシナリ、娘にウソはやめてくれるかな。鹿が宮島から来るわけないだろ?」

「普通はウソになるんだが、これは事実なんだよ。東京で飼えないから預かってるだけなんだ。」

「叔父さん、じゃあお兄さんも東京にいるの?」

「ああ、もちろんいるよ。」

「会えないかな?エミリーまた会ってみたい!」

純粋なエミリーの瞳だがヨシナリには不安が残る。

「会うことは出来るけど、リョウくんの彼女にはなれないよ。」

「ヨシナリ、娘はまだ10歳だぞ。恋愛なんてまだまだ先の話じゃないか。」

しかし、そこにはちょっと暗い顔をしたエミリーがいた。

「お兄さんに女の人がいるのは知ってるけど、結局、男の人は若い娘を選ぶって本に書いてたよ。」

「ぶっふー!」

レオンは思わず吹いてしまった。

聞いたヨシナリも頭を抱えていた。

「エミリー、どこでそんなことを・・・いいかい、エミリーとそのお兄さんの年は離れすぎているからね。それにお兄さんは魅力的な女性が二人も一緒にいたじゃないか、しかも1人はハリウッド女優だったろ。」

「お父さん、私の可愛さはヒトミに勝てない?」

目を潤ませ、レオンに聞いてくる。

「エミリーより可愛い女の子がいるわけないじゃないか。」

「なら、大丈夫だよね?二人より可愛いんだもん♪」

「あっ!」

「レオン、お前はバカか?いいかい、エミリーちゃん、彼は私の娘アズサの婿になる予定なんだ。エミリーちゃんもアズサと取り合いなんてしたくないよね?だから、エミリーちゃんはもっといい人を探したらいいと思うよ。」

「アズサお姉ちゃんの・・・」

「ヨシナリ、それは本当か?ついに婿を見つけたのか?」

「ああ、まだ決まりではないが、アズサが頑張って落としている最中だ。」

「それはめでたいな・・・あれ?その男はアズサを置いて二人の女と宮島旅行してたのか?」

「まだ、落とせてないんだ、リョウくんは魅力的すぎてな、すぐ人を引き付けてしまうんだよ、まあ、今回は鹿も引き付けたみたいだが・・・」

「ヨシナリも苦労しているんだな・・・」

レオンはヨシナリの肩を叩いた。


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