第87話 アントを預けた後
俺とミウはアントを預け帰路についたが、
「ミウ、そんな顔をするなよ。別にどこか違う世界に行くわけじゃないんだし。」
「だって、アズサさんにリョウくんをとられちゃう気がするんだもん。」
「どこまで行っても俺は俺だよ、高校生に手を出したりしない!」
「私にならいいんだよ。婚約者だし。」
「だーめ!俺は子供に手を出したりはしない。」
「むう、子供じゃないもん。」
「そういう所がまだ子供だよ。それより、来週末は埼スタで撮影だからね。予定空けといてね。」
「わかってるよ。二人の共同作業だもんね、リョウくん♪」
「うーん、なんかニュアンスが違うような・・・」
「いいの!でも、構図とか決まってるの?」
「ゴール裏に集まって撮ろうかなと。」
「ピッチに降りないの?」
「ピッチに入るのは違う気がするんだ。」
「そんなものなのかな?」
「うん、それにサポーターと撮るんだからサポーターの居場所で撮るべきだと思うんだ。」
「うん、わかった。当日楽しみだね。」
別の話で気が紛れたのかミウの表情から暗さは消えていた。
その頃、源家では
「鹿の世話って、どうやるの?」
使用人は困惑していた。
「外の客室の扉を外して、出入り自由にしました。取りあえずここで寝てもらいましょう。」
「アントさまお部屋の準備が出来ました。こちらにどうぞ。」
執事の案内にアントは従いついていく。
「ここでございます。」
案内された所は一軒家になっていた。
アントは玄関に入るとアントは玄関内にしかれた藁の上で横になった。
「ささ、アントさま奥にどうぞ。」
執事が促してもアントは首を振り、動くことはなかった。
「そうですか、アントさまはお部屋を気遣われているのですね。では、その場所に藁を増やすことをお許しください。」
執事は使用人に藁を多く持ってこらして寝床として住みやすくした。
「アントさま、どうぞこちらに。」
執事に促されるまま、寝床に座る。
「アントさま、ではごゆるりと。何かあれば本邸の方にお越しください。食事はしばらく後で持ってこさせます。」
執事はアントの前から下がった。
「執事長、鹿の言葉がわかるのですか!」
執事はメイドに囲まれ質問されていた。
「いえ、わかりませんよ。ただアントさまは御理解なされているようですね。」
「えっ、鹿ですよ?」
「皆さん、アントさまを鹿と扱う事はやめてください。アントさまはお客さまです。我等の対応が、お嬢様のリョウ様争奪戦の行方に左右されたらどうするのです。リョウ様は誠実な方です。我等が誠実に対応すればお嬢様に対する好感度も上がるでしょう。」
「はい、そうでございました。我等一丸となりお嬢様の為に尽くしましょう。」
使用人一同の結束が固まるなか、アントはじっと眺めていた。
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