第79話 襲撃される

ガンガン!

「おら!てめぇー!さっさと出てこい!」

「い、イサムさん、まずいですって!」

「るせー!おら!出てこいや!」

イサムはドアを蹴りだした。

「どちらさまでしょう?」

インターホンから女性の声が聞こえる。

「なんだ、アイツは女も連れ込んでるのか?おい、桐谷リョウとか言う奴をだせ!」

「なんででしょう?」

「俺が役者の上下関係を教えてやるんだよ!」

「あーアズちゃんいいから、俺が表に出るよ。」

「ちょっと、リョウくんダメだって。」

そんな声が聞こえた後、ドアが開く。

「そんで、あんた誰?」

「てめぇー!この前会ったのに忘れたのか!」

「うん?会った?・・・あっ、撮影所にいた奴か。」

「そうだよ。」

「そんで、その人がなんで此処に来てるの?」

「てめぇが先輩の俺に挨拶がないからだよ!」

「先輩?俺は特に芸能界に入る訳じゃないからなぁ。」

「じゃあ、なんで映画にでるんだよ!」

「鎧着て、馬に乗りたいから。」

「ふざけてんのか!」

「いや、マジで。それで挨拶はすんだだろ、帰れよ。」

「いや、お前が此処を出ていけ。この家は俺が使ってやる。」

「はあ?ここは個人の別荘らしいよ、俺は持ち主から個人的に借りてるから明け渡す理由がない。」

「知るか!映画にでるんだろ。先輩の言うことを聞かないとヒドイ目にあうぜ。」

「やれるもんならやってみな。手加減なしで倒してやるよ。」

「なんだと!」

「イサムさんまずいですって!下がりましょう。」

「マネージャー離せよ!コイツにわからせてやる」

イサムは殴りかかろうとしていたが、マネージャーに止められていた。

そこにアズサが話しかけてくる。

「話は伺いましたが、スポンサーの私に家を出ていけとは些か変な話ですね。いつからその役者はそんなに偉くなったのでしょうか?」

「み、みなもとさま・・・」

「はあ?この女がスポンサーなのか?」

「イサムさん、頭を下げて、大変な事になりますよ。」

マネージャーは必死に押さえていたが、


イサムはアズサを見て

「ふーん、なかなかいい女もじゃないか、そんな冴えない男は捨てて、俺の女になれよ。」

「なんですか、このゴミは。」

アズサの機嫌は最高に悪かった。

「気の強い所もいいな。」

「気持ち悪い、リョウくん助けて。」

「お前、えーと・・・イサムだっけ、アズサも嫌がってるからさっさと帰れや。」

「お前はお呼びじゃないんだよ。お前こそ帰れ!」

「なんだコイツ?頭大丈夫なのか?」

「イサムさん、まずいですって、すいません、すぐに連れて行きますので。」

「マネージャーさんでしたか?早く彼を連れていってもらえますか。」

「はい、イサムさん早く。」

「おい、離せよ。俺はこの子に用事があるんだよ。」

「そこまでだ!姫に群がるカスが!」

「柴田、よくきてくれました。早くコイツを連れていってください。」

「はっ!直ちに!」

柴田はイサムを掴むと引きずりながら連れていった。


「な、なんだったんだ、アイツは?」

「変な人だったよね。リョウくん助けてくれてありがと。」

「いや、結局助けてくれたの柴田さんだったよね。」

「ううん、リョウくんがいたから安心出来てたんだよ。」

「しかし、撮影で会うとなると気が重くなるな。」

「大丈夫だよ。ちゃんと柴田が処理してくれますから。」

「処理?」

「はい、どうなるかは知りませんが、源の家にはそっち方面の専門家もいるので・・・」

「こわ!」

「大丈夫ですよ、忠誠心に厚い方達ですから。」

「ねえ、源グループって一体どうなっているの?」

「うーん、封建制度がいまだに残ってるのかな?特に各組織の代表なんかは何百年も遣えていただいている御家の方ですし。」

「凄いなぁ、歴史を感じるよ。」

「そういえば、リョウくんの鎧ですが。家臣の方々が贈ってくださいましたよ。」

「うん?それってもしかして・・・」

「もちろん、甲冑師の方に作っていただいた物です。」

「・・・撮影用だよね?」

「実用もできますわ。」

「それって本物?」

「人間国宝の方に作っていただいたものです。まあ、その方も家臣の一人なんですが。その方曰く、最高傑作が出来たと御満悦だったようです。」

「それ着るの?」

「はい♪皆様映画の放送を楽しみにされてましたよ。」

「嬉しいけど、なんかシガラミがぁ・・・」

「気になさらず、主君として受け取ってくださいな。」

「だぁー主君じゃないよ、そこ大事!」

「些細な問題です♪それより見てください。」

俺はおそるおそる鎧櫃を開ける。

そこには黒塗りに赤のラインが走る当世具足があった。

「俺に鎧の良し悪しはわからないけど、これは良いものなのはわかるよ。それに格好いい。」

「みんなリョウくんの為に作ってくれたんだよ。気に入ってくれたならよかった。」

「ありがとう、今度みんなにもお礼言いに行かないと。」

「じゃあ、せっかくだし、みんなにその鎧姿を御披露目しようね。」

「えっ?」

「映画の公開に合わせて、御披露目会するからね♪」

「そ、そこまではしなくても・・・」

「ね♪」

「あい。」

俺の御披露目会が決まったようだった。

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