第74話 金髪の少女

「鹿の写真をとっていいですか?」

金髪の少女はたどたどしく聞いてきた。

「いいんじゃないかな?俺のものではないけど。」

「並んで撮りたいのですけど、手伝ってもらえませんか。鹿さんが逃げてしまうのです。」

「そうか?アント手伝ってくれ。」

アントはリョウに呼ばれるままやって来て、少女の横に並ぶ。

「これでいいかな?」

「ありがとうございます。お父さん写真撮って、早く!」

「ゆっくりでもいいですよ。鹿は逃げたりしませんから。」

アントは大人しく座っていた。

お父さんと呼ばれた男性がカメラを構える、

「アント視線はアッチに向けてあげて。」

横を向いていたアントに正面を向かせる。

「えっ?」

少女は驚いていたが写真を撮ってもらっていた。


「いや、君凄いね、どこかで調教師とかしてるの?」

「いえ、普通のサラリーマンですよ。しかし、日本語上手ですね。」

俺はお父さんと呼ばれていたレオン、バークさんと話していた、

「日本が好きでね、気がついたら覚えていたよ。しかし、良く言うことを聞くね。地元の人かい?」

「いえ、今日きたばかりの観光客ですよ。」

「おかしくないかい?普通は言うことを聞かないと思うのだが。」

「さあ?たまたまじゃないでしょうか?まあ、鹿達が賢いのもあると思いますが。」

「君は変わってるねぇ~」

話していると鹿に飽きたのか少女が

「お父さん、そろそろいこうよ。」

「ああ、そうだね。今日はありがとう、娘のいい思い出になったよ。」

「いえいえ、俺は大したことをしてませんから。でも、いい思い出に協力出来たなら幸いです。これからも旅行楽しんでくださいね。」

「では、失礼しますね。」

「お兄ちゃん、バイバイ。今日はありがとうございました。」

金髪の親子と別れた。


・・・ジト目で見てくる二人がいる。

「ねえ、リョウくんなんでまた少女と仲良くなってるのかな?」

「リョウ、小さい子を捕まえるのはやめなさい!」

「待てよ、二人ともさっきの行動に問題なんてないだろ?」

「問題はないけど、今後問題が起こるの!」

「ミウ、よくわからないんだけど?」

「リョウくん、優しいのはいい事だけど、小さい女の子に声をかけるのは犯罪なんだよ?」

「いや、声をかけられたんだよな、アント?」

アントはしらん顔でアクビをしている。

「リョウくん!流れが悪い時に動物に逃げるのはダメですよ。」

「いやいや、今回はアントがモテただけだよね。あの娘も、俺の事なんて忘れてるさ。」

「リョウみたいにインパクトある人は忘れられないと思うな。」

「ヒトミ!いらんことは言わんでいい。」

「私も怒ってるんだからね。可愛い彼女をほったらかして、鹿を可愛がり、あげく見知らぬ少女を毒牙にかけるなんて何を考えてるの!」

「誰がそんな事した・・・してた?」


「リョウくん無自覚ですか?今日は私とデートなのですよ。さあここからは二人きりで楽しみましょう。」

ミウは俺の手を引き離れようとする。

「あら、ミウさん。リョウはこれから大人の時間を過ごすの。気をきかして何処かに行ってもらえないかしら?」

「ヒトミさん、リョウくんと大人のお付き合いするのは私だけですよ。ヒトミさんこそ東京に帰ってもらえません?」

二人の戦いが始まっていた。

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