楽しげに笑う少女
僕がこんな雨の日に外出するのには訳がある。
とは言っても別に深い理由があるわけではない。
今日が週に一度の休みで日用品やらを買いに行く時間が今日しかないからだ。仕事終わりは早く帰りたい。
買い物に行くといつもの帰宅ルーティンが崩れてしまう。僕はそれを嫌った。
傘を差し、水溜りを踏まないように下を向いて歩く。
時より水溜まりに反射する僕の顔は歪んでいて心底覇気がない。
傘で防げなかった雨粒が僕の腕を伝う。冷んやりとしていて少し粘っこい。知らない誰かに撫でられているようで気持ちが悪い。
車の飛沫も僕を襲う。
運転手も気を使っているのだろうが少なからず当たってしまう。仕方ないことだ。しかしまだ道すがら。これ以上濡れるのは困る。
この先には公園がある。公園を抜ければスーパーへの近道にもなるし横から飛沫が飛んでくることもない。
僕は早速公園に入る。
公園の中は車の音も小さくなり、代わりに雨粒が草木を叩く音が大きくなる。
ずっと一定のリズムで鳴る雨音は心地良かった。
バシャ バシャ
ふと心地よい雨音の中を壊すような大きな水の弾ける音が聞こえてきた。
それも僕の前方から聞こえてきた。
僕は外に出てからずっと下がっていた頭を上げる。
そして僕の目に映った景色の中には一人の少女がいた。
彼女はこの雨の中、傘も差さずにセーラー服やローファーが汚れることも構わずに笑いながら天を仰ぎ飛び跳ねていた。
異様な光景だった。
他の人が見たら関わらないように目を背けるだろう。しかし僕は目が離せなかった。
それは決してやましい気持ちではない。
僕は声をかける。
そして僕の人生が変わった。
雨男と雨女 森林 @morinodonnguri
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