第四話 独裁

△△




 ──昭和20年の1945年、日本は第二次世界大戦の真っ只中だった。




 当時の状況は一言で地獄だったらしい。


 食べ物もなく、隣で寝ていた人が次の日になっても起きないなんてことは当たり前だったそうだ。




 そんな中、同年7月26日にポツダム宣言を米、英、中が発表。




 政府が受諾するか否か悩んでいる中、現れたのが


 有安家だった。






 有安家はどん底にあった日本を莫大な資金と人員によって回復を行った。






 まず、米国へ元々送り込まれていた有安家の人が大統領と独自のルートで会談を行い、戦争の終結を発表。




 次に、壊滅的だった日本の人々の生活を各都道府県に有安家の人々を派遣し、回復の指揮を取った。


 公共事業による国の建て直しで人々の職の問題も解決し、その後、政治政権は有安家のものとなった。




 日本はものすごいスピードで立て直されたのだ。


 




 日本国民は歓喜の声をあげ、有安家を神のように崇め〝た〟のだった。












 最後に、彼らは独裁を始めた。












 職業の自由はなく、男女共に決められたもので、


結婚も有安家による承認が必要。


 また、政治の面では俺たち国民は関与できず、彼らの都合のいいように法律は出来上がっていった。




 そして、俺ら未成年にとっても、大人にとっても最大の苦痛なのが、〝彼らに頭を下げること〟 だ。


 有安家の人が前を通り過ぎるか、止めるよう指示があるかまで必ず頭を下げる。 


 微動だにもせず。 


 ただ黙々とそうすること。


 性別は問わず、2歳以上の者が皆そうしなければならない。




 そうして、それ含め、全ての法律の中でひとつでも破った者が現れれば、


 5歳以下のものは再教育として有安家に引き取られ、それ以上の者は……死刑となる──








 俺の妹、メメは……〝コイツ〟らに引き取られたのだ……。






 そして、この高校、橋義高校は唯一、有安の者が1人もいない学校だった。


 正確には校長、教頭以外だが。




 何故、この高校ができたのかをざっくりといえば、有安家の中以外からの優秀な人材を見つけるためらしい。




 つまり、この高校だけが、有安以外の者たちの意見反映のチャンスなのだ──




△△




 ──だから普段、このように礼をする機会なんて滅多にないのだが……。 遺伝か何かだろうか、雰囲気だけで反応ができて、本当に良かった。










 だが、何故、有安の者がここに転校してきたのだ……?


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