第2話 うみと空手

「うみさんが死んだんです」


 傷口に塩をぬられたみたいだ。うみ、というのは俺の幼なじみだ。兄姉のように育った。そして俺の好きな人だった。

 でも……。


「うみが死んだ事と空手は関係ない」


「えっ…」


 田中は信じられないといった顔で俺を見つめてる。信じろよ。


「関係ないぞ」


 大事なことだから二回言った。固まっていた田中はようやく口を動かしたと思ったら。


「いや嘘つかないでくださいよ」


「ついてねーよ」


 全く信じない。正直しつこい。


「たしかに、俺はうみが好きだった」


「はいはい」


「だから、うみのせいにしたくないんだ」


「とか言って一週間くらい家から出なかったじゃないですか」


「うっ、返す言葉もない」


 通学路に田中の家が見えてきた。いつもここで田中とは別れる。


「結局、部活にやる気が無いのは何でですか先輩」


 玄関に手をかけたまま田中は言った。俺はなんて言うか迷った。


「ナイショだ」


 田中は呆れた顔で俺を見た。

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