第4話 過去を乗り越えることで・・・未琴編

「ここ変わってないや。」

「ここが未琴の家?」

「そう。」

やってきたのは僕の家である。

「準備は良い?」

「うん。」

僕はチャイムを鳴らす。

「はーい。どちら様でしょうか。」

母さんの声だ。

「あの 神城さんのお宅でしょうか?」

「睡蓮 表札!」

緊張しているのかわかりきっていることを聞いてしまった。

恥ずかしい。

「はい そうですけど。」

「あの私、神城未琴さんの。」

「未琴のこと知ってるんですか!」

見かねた美琴が母に受け答えをした瞬間、母は食いついてきた。

「はい。今回はそのことについてお話があります。お話させていただけませんか。」

「はい中でお願いします今開けます。」

すぐに扉が開く。

約5年ぶりに会った母の顔はやつれていた。

「はじめまして、私は西条美琴といいます。」

「どうも。」

僕は緊張しながら前へ向く。

「母さん。」

「み・・・未琴 なのかい?」

「久しぶり。」

母さんは、どんな反応をするのだろう。怒るのかな。

僕は目をつぶってしまう。

「未琴・・・会いたかった。」

がばっと抱きつかれる。

「ごめんなさい。私達が間違っていた。」

本当にごめんなさい

そう母は謝ってくれた。

「僕も会えて良かった。」

家族の感動の再会だった。

それからは僕たちは話をした。

その時に知ったのだが、どうやら輝夜さんは両親に対して

「あなたたちの行為は虐待にあたります。彼の心は傷ついています。彼が会いたいと言わない限り、あなた方と合わせません。これは、職権乱用でもなく保護です!」

そういったそうだ。

それから二人で話し合ってもし戻って来たら謝罪することにしたそうだった。

「お父さんにも会って行きなさい。」

「分かった。」

それからはここ5年間にあったことを話した。

「ただいま。」

「おかえりなさい。」

「どうも!」

知らない声だ。

「あなた、未琴が帰ってきました。」

「ほんとうか!」

勢い良く扉が開く。

「未琴!」

「久しぶり・・・だね。」

「すまなかった。この通りだ!」

土下座までして謝ってきた。

「別にもう良いよ。心の整理が出来たからここにやってきたわけですから。」

「おっ。感動の再会ですかい?」

声のする方をみると、知らない男の人がいた。

「父さん 彼は?」

「どうも、俺は現神城医院医院長候補の神埼海です。」

話を聞くと、僕が誘拐されてから、神城医院は代替わりをし 実質的に彼の父親が医院長 父が秘書をしているらしい。

「どうも。」

「あなたも大変でしたね。誘拐なんてされて。相当苦労したでしょ。」

そういいながら、視線は美琴の方に向いていた。

美琴は美人だしスタイルも良い。がイラつくな。

「未琴。」

美琴も怯えているのか袖を強めに掴む。

「そういえば、彼女は?」

「は はじめましてお父様。私は未琴くんの彼女の西条美琴です。」

両親は驚いていた。

「そ そうか。彼女の?」

「実際は血は繋がってませんがまぁ。彼より特殊なんですよ。」

すると、

「その子もなんだ ひどいっすねその人 誘拐なんて。」

「私の両親は物心つく前に亡くなりました。それから 母は女手一つで私を育ててくれました。」

神埼さんがわらった?気がした。

「美琴さん 彼女は?改めて挨拶をしたいのですが。」

「 今から一年前に亡くなりました。」

「そ そうですか。」

僕はもう大丈夫な気がした。

もう両親と会えた。わだかまりも解けた。

十分だ。

「じゃあ。そろそろ僕たちは帰ります。」

「そ そうか。もう少し話したかったが。」

「またいつでも会えますよ。」

僕の言葉に安心した顔をする。

「でしたら私が送っていきましょう。もう暗い。駅までなら分かりますから。」

神埼さんが申し出る。

「いえ でも。」

「いえいえ、遠慮なく。僕個人としては、二人と話したいですし。」

ここまでの行為を断るのは、失礼か。

「お願いします。じゃあ、父さん、母さん。今日は会えて良かった。」

「あぁー、元気でな。またいつでも帰ってきてくれ。」

「美琴さん 未琴のことよろしくお願いね。」

僕たちは、神埼さんの車に乗っていく。

そこから車に乗って駅の方へ向かう。

「いやぁー、神城さんにはお世話になってますよ。」

「そうですか。」

秘書だし、色々あるんだろうな。

「そういえば、一つ相談なんですけど。」

次の言葉はとんでもないものだった。

「彼女 僕にくれませんか?」

「はっ、何をいってるんだ!」

「取りあえず降りましょう。」

ちょうど駅についた僕たちは車を降りる。

「では、改めて 彼女を伴侶に向かえたい。だから。僕にくれませんか?」

「だから、何をいっているんだ!」

「考えてみてください。君は学生だ。神城の息子といえどもう医院は私達神埼のものだ。将来の決まってない君と将来有望な僕とでは差がある。とはいえメリットもいるでしょう。でしたら安定した職はどうでしょう。彼女を僕にくれれば僕は次期医院長 まぁ、事務職ですが、我が医院に雇って差し上げます。」

「ふざけるな。人を道具みたいにしやがって。」

ふざけている!

「まぁ、いいでしょう。問題は僕たちではない。彼女だ。」

神埼は美琴の方を向く。

「西条美琴さん。私の伴侶になってください。彼のようなしょうもない男より僕と幸せになりましょう。」

ふざけている そう思った。そうは思うのだが彼女が神埼を選んでも、僕は何もいえない。

神埼の言うことは一理ある。僕は未成年だ。安定した職につけるとは限らない。

「神崎さん。」

美琴は近づく。

「美琴さん!」

神埼は苦しそうな声をあげる。

良くみると、美琴が神埼の股を蹴りあげていた。

「な なんで。」

「理由は2つです。一つ目は母の輝夜をバカにしたこと。そしてもう一つは未琴をバカにしたことです。これは許せません!」

「お お前、僕に楯突くとどうなるか分からないぞ!」

「あら 口調が崩れましたね。でも、残念。

さっきまでの話録音しましたから。もみ消すことは無理だと考えくださいね。では、さようなら 行こっ未琴。」

僕は未琴に手を引かれて連れていかれる。

「あれ嘘でしょ。」

「ありゃ、バレたか。」

帰りの電車僕は彼女の真意を聞くことにした。

「美琴は嘘つくとき、口調が変わるから。」

「マジ!気を付けないとな。」

「でも、ありがと。」

「うん・・・明日は私の番だから。」

この時、美琴の顔が少し赤かったのは気のせいではないはず。









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