第3話 過去の話
突然だが、僕は今から5年前 中学一年生のある日、誘拐された。
それまでの僕は頭はよかったと思う。でも、それは両親の期待とは大きく異なることだった。
「なんでこんなことも出来ないんだ!」
「私達の期待を裏切らないで!」
そんなことを両親に言われ続ける日々、まぁそんなことを言われ続けて心がすさんでいた。
そんな僕のことを周りは快く思ってなく
陰口やものを隠されるのは日常茶飯事だった。
まぁ、暴力をふられてないだけましだったんだと思う。
正直言って辛かった。誰も助けを呼べなかった。
死にたいと思うほどに・・・。
痛いのが嫌だから自分で死ねなかったけど。
そんな風に毎日を過ごしていたある日、彼女が現れた。
いつも通りの帰り道。
「はぁー、今日も帰ったら勉強かぁー。」
ため息と共に誰にも聞こえない愚痴をこぼす。
「少し道を聞いてもいいかな?」
「えっ。」
声をかけられて振り返ると、彼女がいた。
「ここに行きたいんだけど。道が分からなくて。」
「えーと。あっここは僕の家です。」
道の行き先は僕の家だった。
「じゃああなたが神城未琴君?」
「はい。えっと どちら様ですか。」
僕自身この人に会った覚えがないぞ。両親は神城医院の医院長と副医院長だからこの人は医療関係者なのかな?にしても知らない相手に自分の名前を知られているのは怖いな。
「あぁー自己紹介が遅れたね。私は西条輝夜 君を誘拐しに来た怖い人さ。」
「・・・はっ?」
いきなり言われたことに驚きの声を上げる。
「それじゃあ、お休み。」
僕は意識を手放した。寸前に黒い塊を腹部に当てられたのを感じながら・・・。
それからいくつの時間がたったのだろうか。
「・・こ・ここは?」
「あっ、気がついた。」
声のするほうをみると知らない女の子がいた。
「き 君は誰?」
「私は美琴 西条美琴。」
「西条。」
僕はここまでの経緯を思い出す。
そっか、僕は誘拐されたのか。
「お母さん呼んでくる。」
そう言い残して美琴は行ってしまった。
それからほどなくして母親(誘拐犯)がやってきた。
「目が覚めたようね。」
「あの 僕に何をさせる気ですか?」
誘拐するくらいだからお金目的かな?でも、あの人たちがお金なんか払うのかな?
「別になにもさせないわよ。」
「・・・はっ?」
思わず声が出てしまった。
「あなたにはこれから私達の家族になってほしいの。」
「なんで。」
僕の問いに彼女は言った。
「私、結構家を仕事の都合上空けることが多いのよ。だからいつも美琴はひとりぼっち。
だから、話し相手になってほしいの。」
なんだかめちゃくちゃだ。
「どうかな?正直言って、誘拐してきたからね。家族に返す選択肢はないわ。」
軽く脅しをかけてきたぞ。
「それじゃあ、早速だけどお留守番よろしくね。美琴 ちゃんと仲良くなっとくんだよ。」
そう言い残し輝夜さんは出ていった。
「・・・。」
「・・・。」
めっちゃ気まずい。
「えっとー。自己紹介でもする?」
「うん。」
とりあえず自己紹介をすることにした。
「えーと、僕は神城未琴」
「私は西条美琴」
「誕生日は7月7日」
「私も同じ。」
「好きな色は赤」
「青」
「趣味はなし。」
「料理」
それから少しずついろんなことを話した。
「お腹すいた。」
美琴の声を合図に僕のお腹も鳴る。
「ご飯にする?」
「お願いします。」
それから数分
「どうぞ。」
「いただきます。」
「大丈夫?」
「えっ?」
一口食べてすぐ美琴から言われる?
ここで僕は泣いてることに気づいた。
「あれ?なんでだろ。」
「大丈夫だよ。」
急に美琴は僕を抱いて頭を撫でてきた。
「お疲れ様 よく頑張ったね。」
「・・・うっ!」
僕は色々と抱えていた。そのたかが外れたんだと思う。
僕は泣いた。声を出して。
「落ち着いた?」
数十分くらい泣いていたと思う。
「ありがとう・・・!!」
僕は今の状況を確認しすぐに離れ後ろを向く。
恥ずかしい。女の子の前で声を出して泣くなんて予想外だった。
「え え えーとごめんね。」
「ううん。辛かったんだろうし。あたためなおしてくるね。」
そういって行ってしまった。
「うがーーー!」
僕はここについたときからいるベットの上で悶える。
これが、僕と美琴が出会った日。
そこからは、最低限しか部屋から出ることは許されなかったけど、それ以外は普通の生活を送れていたと思う。
そんな生活も3年経過した。
「今日から普通にそとに出ていいって。」
「あっ、そうなんだ。」
はじめはぎこちなかったが今では仲良くなった。
そして一年間僕は普通に過ごした。といっても学校は中退した。それでも、輝夜さんと美琴が勉強を教えてくれたり あの人たちの影響で、高校3年生程度は苦もせず出来た。
でも、その生活も長くなかった。
輝夜さんが亡くなった。
誘拐されて少したったあとで知ったのだが、輝夜さんは警察官だった。
警察官が誘拐犯とはと思った。
その輝夜さんは、事件の捜査で犯人と争った結果 刺されたらしい。
葬式は僕と美琴だけで行った。
輝夜さんの親は既におらず親戚とも連絡がつかなかったからだ。
「未琴 これ。」
遺品整理をしていたところ二枚の手紙が見つかった。それぞれにそれぞれの名前があった。
「読んでみるか。」
「うん。」
西条未琴へ
君がこの手紙を読んでるっということは、私はもうこの世には私はいないのでしょう。
いやぁー まさか死んじゃうとはね。まぁ、警察官なんて危険な仕事してんだから文句も言えないや。
今から5年前私は君を誘拐した。
あれは嘘。
実際は保護だった。
君の両親の行いはDV 虐待だった。だから私は君を保護した。誘拐なんて言ったのは、君がもし両親のことが好きだったらって思ってね。
未琴 今まで黙っててごめん。過ごしてるうちに言えなくなった。でも、勘違いしないでね。例えお腹を痛めて産んでないけど、私達は家族だ。
以上が懺悔。
次はお願い。
美琴をお願い。
美琴は今から18年前に犯人を捕まえたところにいた子供だった。だから、血のつながりはないんだ。
美琴も今 私の手紙を見て知ったと思う。
本来なら言わずに墓まで持っていこうと思ったけど、それは失礼な気がしてね。
美琴は未琴 あんたが思っているより弱い子だ。誰かが支えになってやらんと行けない。
だからその支えになって上げて。
もちろん、これはお願いだから強制じゃない。好きな子がいたらその子にアタックしな!
未琴の人生だ。
でもあんた、知ってんだぞぉー!美琴が好きだって。
だてに警察官として事件を解決してない。目はいいんだ。
気づいてないのは美琴と未琴だけだ。
といっても二人のこと知ってるのはあたしだけか。
以上がお願い。
じゃあ最後に。
未琴 君たちと過ごした時間は本当に楽しかった。仕事一筋の私が良い意味で人間味溢れてきたよ。
ありがとう。君たち家族になれて本当によかった。
西条輝夜
「未琴。」
声が聞こえる。
声の方を向くと、美琴は泣いていた。
僕も泣いていた。
僕たちは泣いた。葬式の最中は泣かなかったのに、あの優しかった僕たちの母親が好きだったと改めて分かった。
「未琴は離れないでね。」
「うん。僕は離れない。」
輝夜さんのお願い。それもあるけど、それ以上に僕の意思で隣にいよう そう思った。
「ねぇ。この手紙続きがあるみたい。」
美琴の手紙をみると
追伸
私の戸棚の一番下の下 そこに君たちの両親の今の住所が書いてある。美琴の両親は残念ながら亡くなってしまっているけど、未琴の両親は生きている。覚悟が決まったら、一緒に内封されているものと一緒に会いに行ってみなさい。
「これって。」
「うん。そういうことだと思う。」
これが過去の記憶の一部。
それから一年後 会いに僕たちは僕の両親に会いに行く。
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