第2話 恋人になっての初デート

美琴と付き合いだして一週間 特に今までと変わったことがなかった。

しかし今日 僕は勇気を出すことにした。

「どうしたの?」

「い いや、なんでもない・・・よ。」

「怪しすぎる。」

自分でも思う。これは怪しい。だが緊張している状態だ。

勘弁してほしい。

「未琴 何か隠しているでしょ。」

「隠してはないよ。」

そう僕は別に隠し事があって緊張しているわけではない。

「怪しいよ。」

「ちょっとまってね。」

僕は深呼吸する。

「あのね・・・ちょっとまって。」

「未琴、遅い!」

怒られてしまった。

「あ あのさ、デートしてくれない?」

言ったよ 言っちゃったよ。怒られてしまったけど、言えたよ。

二人でお出掛けはしたことはあるが、それは食材を買いに行くぐらいで、世間でいうデートはしたことがない。

「だめ・・・かな?」

僕はおそるおそる聞く。

「未琴・・・。」

一瞬の静寂。

「あんたは乙女か!可愛いか!」

突然抱きついてきた。

「何々、もしかしてデートのお誘いのためにそんなに緊張してたの?何それ チョー可愛いんですけど。」

「う うるさいな。別にいいだろ。」

僕は抵抗するが、美琴はそんなことお構い無しに抱きついて頭を撫でてくる。

「うふふふ。もちろんデートはオーケー。私もしたかったし。もちろん明日だよね。二人とも暇だもんね。」

「ちょっと 勝手に決めないでよ。確かに明日を予定にしようとは思ってたけど。」

ということで、明日僕たちはデートすることになった。

この日、僕たちの平穏を乱すことになるとは思わずに。

翌日・・・

「ほら・・行くよ!」

僕たちのデートが始まった。

今日は遊園地が目的地だ。

「まずは、何にする。」

「やっぱり絶叫系には乗らないとね。」

そこからはジェットコースターにフリーフォールととにかく絶叫尽くしだった。

「次はこれにしよう!」

「えっ! ここに行くの?」

美琴が次に指したのはお化け屋敷だった。

「何?嫌なの?」

「いや 嫌じゃない・・・けど。」

僕は何を隠そうお化けや幽霊の類いが苦手なのである。どのくらい苦手かというと、怖い話とか聞いたりみたりした日には、一人では眠れないほどである。

昔は英雄が今は美琴がいるからなんとかなってはいるのだが。

「未琴 もしかして怖いの?」

ここで怖いと言える人になりたかった。

でも

「別に全然大丈夫だし!」

言えない人でした。

ちょーカッコつけたがりなのです。

「それじゃ行こっか。」

「は はい・・・。」

僕たちはお化け屋敷に足を踏み入れるのであった。

「ねぇー未琴?」

「な 何?」

「やっぱり怖かったんならそういってよ。」

「こ 怖いわけがないだろ。」

「なら・・・この状態はなんなのさ。」

現在の状態は僕が美琴の腕にがっしりしがみついているのだ。

「こ これはあれだ。美琴が怖がらないようにしているんだ。」

正直言ってて苦しい気がする。

「美琴、あそこ!」

急に美琴が指差す。

「ひゃっ。何々。」

僕はより一層腕に捕まりながら言う。

「あっははは。冗談だよ。」

「や やめてくれよぉー。」

そこからは、ちょくちょくお化け屋敷の中で美琴は驚かしていき、屋敷のなかに僕の悲鳴が響いた。

「も もう行きたくない。」

自分としては死地からの生還を果たした気分でいた僕はベンチでダウンしていた。

「美琴面白かったよ。」

「ひどいよぉー。」

僕は必殺上目使いのうるうるを発動する。これは普通女の子側ではとは思ってはいるのだが、美琴には効果抜群だ。

「くっ!」

美琴はぐわぁーとやられたフリをしてる。多分本当にやられたと思うが、少し大袈裟だ。

「どうしようかな。こんな顔されるともうやらないほうが・・・いや、でもこの顔をもう一度みたいという気も。」

あまりよくない方向に進む気がした。

「お お昼にしよう。」

僕は話をそらすネタを探すと、時計の針が12時を回っていることに気づいた。

「ほんとだ。もう12時過ぎてる。」

美琴は驚いていた。

よしよし、話をそらせるぞ。

「取りあえずお昼にしようか。お弁当作ったんだ!」

お弁当はしっかり作り込まれていた。

「どうかな美味しい?」

「うん とっても美味しいよ。」

僕好みの味付けでおいしかった。

「ごちそうさま。」

「はい お粗末様でした。」

とても満足した。

「お昼からはゆったりとしたものに乗りたいです!」

「僕も同感。」

腹も膨れた僕たちは、メリーゴーランドやコーヒーカップなど絶叫系ではない乗り物を楽しんだ。

そして最後にはもちろん観覧車だ。

「綺麗だね未琴。」

「うん。」

デートの最後。僕は覚悟を決める。

「あのさ、美琴。」

「うん どうしたの?」

デートの誘いのような失敗は出来ないな。

「大事な話があるんだ。」

僕の顔をみて美琴も真剣な顔になる。

「僕は美琴のことが好きだ。大好きで大好きでずっと一緒にいたい。」

「き 急にどうしたの。」

美琴は照れるように言う。

「だからこそ僕たちは過去から抜け出さないと行けないと思う。」

「な 何を言って。」

僕の言葉に美琴は戸惑い始める。

「僕たちはあの人に救ってもらった。でも、今後二人で一緒にいるためには一度過去に戻らないと行けない。」

「・・・。」

美琴は悩んでいる。観覧車はもうすぐ終わる。僕たちのこのときももうすぐ終わる。

「そうだね。」

美琴は決めたようだ。

「未琴の言う通りな気がする。怖いけどやっぱり逃げてちゃダメなんだと思う。」

「じゃあ!」

「でも、約束して。」

美琴はぐっと顔を近づけて。

「過去に戻るときは二人で行こ。私は弱くて一人では立ち向かえないから力を貸して。」

「わかった。二人で行こ。」

僕は手を取る。

今から僕たちは12年前に行く。

あの人に出会ったあの日まで。

「僕たちの本当の両親に会いに。」










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