第4話 最後の夢

僕と裕太はテーブルに向かい合って座っていた。


「圭吾、いいところまで来たじゃん。」

裕太が話しかけてきた。この話の展開であれば、こちらから質問もできそうだと思った。


「ってことは、裕太は僕の双子の兄弟じゃないってこと?なんで最初から教えてくれなかったわけ?」

僕は少し厳しくい口調で裕太に質問をぶつけた。


「ほら、物事には解決の手順ってものがあるじゃん。だからまずは兄弟ってことにしておいた方が、都合がよかったんだよ。でも、実際兄弟でないとも言い切れない。」


「どういうこと?」


「人の魂は、おなかの中にいる時にはまだ存在しないんだ。魂とか心ってものは外の世界に出るときに初めて神様から『与えられる』ものなんだ。おなかで育っている時は『タネ』だけ、だね。そこから芽が出るのは、外に出てから。芽は魂と一緒に出てくるものなんだよ。」

裕太は得意気に話をした。


「なんでそんなことがわかるわけ?」


「うーん。それは神様から聞いたから。」


「神様がなんで裕太に教えてくれるんだよ。」


「その話はいいや。圭吾は僕を置いて行ったことを忘れちゃってたじゃない?僕も同じだよ。一人になって誰も助けてくれないという恐怖を抱えていると、『もう生きていけない』って諦めちゃうから、忘れるという防衛本能かと思うけど。」


「圭吾のお母さんの強い思いと、僕のお母さんの思いが重なって、その結果として僕には2つの魂がやどっちゃったんだ。僕たちのお母さんは双子だろ。何か不思議の力によるものかもしれない。わかるかな?」


「裕太は二人の裕太の合体型ってこと?」


「もとの裕太が圭吾の見守り役で、僕が圭吾と夢の中で会う係。ダブル裕太体制ね。」


「…。うーん。よくわかんないよ。もとの裕太って僕の双子の方ってこと?」


「そうそう。大分わかってきたでしょ。」


「で、裕太は今どこにいるの?叔母さんもお母さんも裕太に会えると信じてるよ。早く会わせてあげたいし、僕も会いたいし。」

僕は、今度ははっきりと居場所を聞くことができた。


「ごめん。僕らは会うことはできないんだ。」


「どういうこと?」


「僕たちが生きてるってことはわかってもらいたいんだ。実際、僕は成長しているし、こうやって毎日圭吾に会ってる。夢の中だけでだけど。」


「そういうことなんだよ、圭吾。だから僕たちはずっと君を見ていた。一緒に成長してきたんだ。」


「わかんないよ。どういうこと?」


「もう夢に出る必要はないかもね。いや、やっぱり圭吾が心配だから、一言いいたくもなるし、時々は出て来ちゃうかもしれないけど。」


「ちょっと、待ってよ。どういうことだよ!」


「最後にメッセージね。」

と言って、裕太は僕に短い言葉を告げた。


「いやだよ!裕太に会えなくなるのは!」

僕は夢の中で叫んだ。絶対に嫌だ!


「わかんないよ!なんで会えなくなるんだよ!」


「もう朝だよ…。ありがとう。」

遠くから裕太の小さな声が聞こえた気がした。

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