第13話

「俺と夜斗が同じ学校だったころ…。それも1年生のときに、俺らの2個上の先輩にイジられたのが原因で、あいつは同級生にいじめられていた。部活内とはいっても人は多かったし、よく耐えてたと思う」


『助けなかったんだ?』


「…貴女に言うのは嫌なんだが…。俺も主犯に近い。雰囲気に流されて、相当ボロクソに言ったよ」


『ふーん。相当クズだったんだ』


「…否定できない。それから、だな。夜斗が暴走しやすくなったのは。聞いたことないすか、あいつの人格の噂」


『あー…巷で噂だね。なんだっけ、頭部打撃と過剰精神攻撃で暴走するんだっけ?』


「あってる…怖いな、その情報網。それと同時に、あいつは昔から複数地点で目撃情報がある。公安としても調べてるけど、全くわかってない」


『…場所は。複数地点っていうの』



霊斗はメモ帳アプリを開いて、トップに保存されているものを見た

それは夜斗に関する情報だ



「直近だと、大型ワームが現れた日に、神社と学校、公安の事務所で目撃されてる」


『本人はどこにいたっていってるの?』


「神社」


『たしかに監視カメラだと、それぞれで1人観測されてる。指で銃みたいな仕草をしてカメラに向けたら、ブラックアウトしてるね』


「…ブラックアウト?」


『画面が暗転してるってこと。多分、なにかやばいことが起きてるよ。夜斗にも、君にもね』



そういってアイリスはなにかのデータを霊斗に送った



これが、失踪前最後の通話記録だった






「アイリス…」


「…悪い。俺が最後に話したのに、異変に気づかなかった」


「それは仕方ない。あいつの異変は俺以外に観測されたことはないんだ。にしても、俺が複数地点で観測されたり、唯一の情報源を潰されたり厄介だな」


「…冷静、なんだな。友人なんだろ、アイリスさんは」


「そうだな。焦っても仕方ない。けどそれは」



夜刀神を霊斗に突きつける

右目に、金色の文字盤が現れ針が動き、時計のようになっている



「それは、俺がキレてないことの証明にはならない」


「…殺されても文句は言わないぞ。存在ごと消されても」


「そんなことはしない。ただ、公安部特殊捜査部隊は潰す。次のバイト先を探すんだな」



夜斗は夜刀神を地面に突き刺した

地面といっても、ここは地上ではない

30階建てビルの屋上の縁だ



『こちら来夏。聞こえますか、夜斗様』


「おう。どうした?」


『探知でアイリス様の居場所を特定しました。座標送ります』



夜斗の脳に入ってきた座標は、最も夜斗が嫌な場所だ

それは、白鷺の自宅。というよりマンション

白鷺は親の金でマンションに一人暮らしをしている



「わかった。ありがとう」


『お礼は1日デートでお願いします』


「考えとく。いくぞ、霊斗」


「…ああ」



夜斗と霊斗は、なんの躊躇いもなくビル屋上から飛び降りた

少し低いビルの屋上へ降り立ち、今度は飛び上がってさらに別のビルの屋上を渡り歩く



「ここからなら数分だ。窓から強襲と捜索の二手に分かれるぞ」


「りょーかい。俺は?」


「霊斗は強襲。俺はちまちま探す」


「ういよ。牙装展開」



霊斗の右腕に現れた帯が解けて消える

その下には、機械的な爪が現れていた

長さは20cmほどで鋭く尖っている

現代の吸血鬼が自身の牙で吸血することは少ない

それはいつぞやの吸血鬼が、衛生面を気にしたためだ



(そんだけで牙装を開発した霊斗こいつは、まぁまぁ変態だな)



屋敷前で夜斗は魔術で身を隠し、霊斗は大きく跳び上がり、宙返りして飛び蹴りの姿勢になる

魔術で窓ガラスに向けて自分を撃ち出し、蹴り破った



「さぁて、お仕事だ」



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る