第9話
「やっと会えた!一樹ぃ…!」
「は…?」
「え…?」
「どういう、こと…?」
来夏以外が戸惑う中、人影にまとわりついていた黒い何かが取れて顔が現れた
それは少女だ。黒髪ポニーテールで、服装は街のJKのようなもの
そんな美少女が夜斗に抱きついている
「…お前、卯月か…?」
「おっ?覚えてくれたんだね!」
「いやなんか…雰囲気変わりすぎじゃね…?」
「精霊としての重荷がなくなったし記憶が戻ったのさっきだからかな?ここまでの人格に記憶が乗っかっただけだし?」
「お久しぶりです、霧桜様」
「んー?あ、桜ちゃん!」
突然現れた卯月は来夏に駆け寄り、頭を撫で始める
そしてぎゅっと抱きしめた
「ありがとね、一樹を守ってくれて」
「いえ、役目を果たしたまでです」
「その人が…霧桜様…」
「何でもいいですけど、マスターに抱きついたことだけは許しません。それ以外はこの際どうでもいいです」
唯利と夜刀神をおいていきつつ話が進む
卯月が刀を抜いて、唯利に向ける
「で、貴女は誰?」
「桜嶺唯利。貴女を祀る神社の巫女」
「その巫女が私の一樹と一緒にいるのはなんで?」
「…一応妹だ。血縁も養子縁組もないが、ガキの頃に親が死んでたらしく、唯利の親に養われていた」
「そうなの?でも大丈夫!私社長だし養われなくて済むよ」
「お前に養われてんだろそれ。つかワームに対応しなきゃなんねぇし仕事やってるわ」
怒涛の勢いで行われる会話を断ち切るように、神社の境内に踏み入る音が聞こえた
少しずつ近づいてきて、夜斗の後ろで立ち止まる
と同時に、手に持っていたカランビットナイフを夜斗に振るった
「ご挨拶だな」
「いつも通りだろ、夜斗。久しぶりだな」
全員が戦闘態勢になる中、夜斗はそのナイフを同じようなナイフで受け止めた
夜刀神はどこからか取り出した刀をおろし、唯利は大型のナイフを懐に隠した
しかし来夏と卯月はそうもいかず、そのまま斬りかからんばかりの勢いで睨んでいる
「なんだこいつら。夜斗の知り合いか?」
「前世の兼ね合いだ」
「一樹、こいつ誰?」
「こいつとはご挨拶だなぁおい。俺は
霊斗はニッと笑いながら言い、ナイフを仕舞った
コンッと子気味いい音を立てて、竹が石を叩く
縁側に座る夜斗と霊斗。そして夜斗から離れない卯月
そんな卯月と夜斗の後ろで笑う来夏と、霊斗の隣でため息をつく唯利
何とも言い難い、異様な光景だ
「夜斗の記憶戻ったんだな」
「え?知ってたのか?」
「知ってたに決まってんだろ。死神の友人だったんだから」
「そ、そうか…じゃあお前も転生して…」
「いや?俺は当時からずっと生きてる。あれ言わんかったっけ、俺吸血鬼だよ?」
「初耳だわタコ」
緑茶を飲む2人。場所と相まって、まるで年老いた友人と再会して話をしているかのような光景だ
唯利はかつての夜斗を知るため、卯月と来夏は現在の夜斗を知るためにこの場にいる
霊斗と夜斗は実家が隣同士で、幼き頃からの友人だ
それどころか前世からともなれば、こうして人が集まるのも仕方がないのだろうか
「あ、ちなみに天音は眷属だから普通に今も生きてる」
「は…?つかそうなら、戸籍は?」
「俺と天音の子孫として生きてる。戸籍的には何回も死んでるな」
「ほーん。何年経ったよ」
「1000年かそこらだな」
「ねぇ夜斗。そろそろ私の家いかない?」
「まぁ待て。少しこのバカをしめ…バカと話してからだな…」
「俺を絞められると思うなよ」
唯利はまたため息をつき、空を見上げた
澄み切った空と対象的に、唯利の心は曇天だ
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