第8話

「もうそんな時間か」


「そんなはずないけど…来夏、なにかわかる?」


「…ワームが来てます。それも、大型…」


「大型!?結界間に合うかもわからない…!」


「なんだワーム来るのか?」


「とびっきりの大型です。おそらく強大な魔力を狙い、ここに来たんでしょうね」



まだ待機していた夜刀神が夜斗を見る



「私を使ってみます?マスター」


「使うってのは?」


「神機って結局武器なので、私は大剣になれるんですよ。まぁ適当に振り回してもそれくらいは斬れます」


「なら、試すか」



いきなり実戦でも、夜斗は臆することはない



「あの日の後悔を、また感じる気はない。守るさ、今回こそ。死なずにな」



剣になった夜刀神は、幅50センチほど、長さ2メートルほどの大剣だ

刃は片刃で、峰側を肩に乗せてくるというワームを待つ



「…あれか」


「そうね。あれは多分、そんなに強くないから初めてにふさわしいと思うよ」


「ほー。ま、やってみるか」



夜斗は夜刀神に魔力を流した

魔法よりもわかりやすく、単純な力だ

姿が見えた。ワームは芋虫に大量の目をつけたような見た目をしている

夜斗は苦虫をかみ潰したかのような顔をしたが、どうにか抑えて夜刀神の切っ先を右斜め前に向けて構えた



「夜刀神にならできる」



振り抜いた夜刀神は、斬撃を魔力に変換して魔法として飛ばした

斬撃そのものを飛ばす、という言い方がわかりやすいだろう

その斬撃は見事、ワームの首(?)を飛ばした



「どうだ」


「いいんじゃない?スマートにやるなら跡形もなく消すべきだけど」


「まぁ残骸が残るよな」


「っていうのもあるし、ワームが死ぬ瞬間に出すフェロモンに釣られて増えるときがあるの。ワームは普段人の形してるから大したことじゃないけど」


「大したことだろ先に言え」



夜斗は夜刀神を人型に戻しながら言う

唯利が振るった大幣から出てきた球体が飛来し、ワームの残骸を吹き飛ばした



「逆にその特性を利用するときもあるから良し悪しだけど。私は消し飛ばすことしかできないし」


「ほーん。…む、なにか来るぞ」



夜斗は見えた人影を指差した

空を飛んでいるがこの際気にしないことにする



「あれは…ワーム、でしょうか」



夜刀神の呟きと同時に、唯利は大幣を、来夏は短剣を抜いて振り抜いた

ほぼ瞬間移動のような速度で突撃してきた人影の刀を弾きのけぞる2人



「同時に2人攻撃するとは、やり手です」


「思ってたよりワームが増えてるの?」


「わかりません。が、まず人型のままこの戦力と考えるとかなり手強いかと」



2人の会話を遮るように、人型が刀を振り払い、鞘に納めた

と同時に走り出し、夜斗を襲う



「なっ…!」


「マスター!」


「夜斗!」



3人が防御しようと走り出すが、間に合わない

夜斗はその人影に押し倒された

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