第7話
中で唯利は大幣を出しながら、巫女服を脱いでいた
「何故脱ぐ」
「必要だから。別に見慣れてるでしょ、私の下着姿くらい」
「うんあんまり否定できない」
3年前までは同じ部屋で生活し、風呂は同じ時間に入っていたこの二人
もはや互いの下着姿や裸など目を向けることすらなくなっていた
唯利は夜斗を座らせて、大幣を夜斗に持たせる
「魔力を込めれば召喚できるはずだけど、そもそも魔力認識できてる?」
「何となく?みたいな。魔術使うノリでいけばどうにかなる」
「じゃあいけるね。夜斗も上だけ脱いで。限りなく布面積を減らす必要があるから。特に神機の場合は」
「何故ぇ…」
「簡単に言うなら、神機に嫉妬させるため。召喚のときに禊とか夜伽してたら嫉妬して、主への忠誠心が強くなる」
「模擬的に夜伽とかを再現するのか」
「そゆこと。久しぶりに夜斗の夜斗を見たいっていうのもなくもなくなく」
「下心じゃねぇか」
夜斗は上だけ服を脱ぎ、大幣を握る
そしてあの日、雨を避けるときに使っていた感覚を記憶から呼び起こし、魔法陣を通さないイメージ
魔力にしても霊力にしても、空間にある魔素や霊子を肉体に取り込み、炉で変換することで現れる
それを魔法陣に通すことで魔術や霊能が使えるのだが、夜斗はそれを感覚だけで実行した
瞬間、嵐が吹き荒れた
耐えきれず目を閉ざす2人
「なんだこれ…!?」
「っ…!夜斗の魔力が多すぎる!ちょっと抑えて!」
「え?どうやって?」
「燃料が少なければ魔力も相応にしか生まれない!深呼吸さんはい!」
「参拝だけに…?」
溢れ出る魔力がどうにかとどまり、2人が目を開けた
そこにいたのは、昨日の来夏と似たような服装をした少女だ
しかし色は紺に近く、少女の髪は紫。目までも紫だ
「私が呼び出されるとは、思いませんでしたよ。お訊ねします。貴方が私のマスターですか?」
「お、おう。そうらしいな」
「神機【
「…どうすりゃいいんだ唯利」
「ここまでの大物なら契約したほうがいいと思う」
「なら契約で…。でどうやんの」
「口づけです。まぁ性行為でもいいんですけどね。粘液同士の接触が条件なので」
「神機ってハードなんだな。…え?キス必須?」
「ファーストキスを取られたくないということでしたら、性行為でも可です」
「嘘言わないで。血液飲ませたら終わりでしょ」
「なんで知ってるんですかこの子…。まぁそういうことです。貴方の血をいただければ」
「怖いなこいつ…」
唯利がどこからともなく取り出したナイフで指先に小さな傷をつける夜斗
夜刀神は膝をつき、差し出された指先をチロチロと舐めとる
「…そろそろいいだろ」
「
「また嘘!」
「嘘かよ」
「堪能しました」
ぺろっと自身の唇を舐めた夜刀神が、淡い青に輝きすぐに光が消える
いわく、契約完了らしい
「さて…で、夜刀神ってすごいのか?」
「どうなんでしょう?私、自分以外の神機知りません」
「えぇ…」
「神機のランクは3段階くらい。けどその…夜刀神は夜刀神なんだけど、この夜刀神は異端伝説なんだけど…。日本神話の夜刀神って知ってる?」
「ああ、蛇の神だろ?殺されまくったやつ」
「そうそう。でもこの子は、殺されずに日本を駆逐した蛇神なの。この世界に存在するはずのない神だから、最強格より強いと思う」
「……ああ!ここって私が滅ぼさなかった世界線ですか」
「異端伝説っていうのは、伝えられてる神話とは別の神話。失われたお話の登場人物…みたいな感じ。早い話作者から見た失敗作」
「失礼ですね。まぁそんなことより、マスター。ご命令を」
立ち上がり、どこかの貴族のようにスカートをつまんでお辞儀する夜刀神
「…なぁ唯利。卯月…じゃなくて霧桜は見つかったのか?」
「え?見つかってないよ」
「なら夜刀神。俺の記憶から、卯月という奴の魔力を読み込んで探してくれ」
「わかりました。居住地はどうにかします」
「ああ。来夏のとこに戻ろう」
夜斗と唯利は社務所のエントランス的な場所に戻り、外に出た
先程まで快晴の昼だったはずだが、真っ黒な夜になっている
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