第5話

翌日。土曜日

夜斗は来夏に呼び出されて、彼女の自宅に来ていた



「もしもし?ってアイリスか」


『やっほー夜斗。元気してる?』



電話をかけてきたのは夜斗の元クラスメイト

アイリス・アクシーナ・アンデスティア・風華という、非常に長いフルネームを持つ彼女は、先日紗奈に抱き枕を与えた張本人だ



「お前やってくれたな?紗奈に俺の抱き枕渡しやがって…」


『オーダーメイドの依頼だったからねー。夜斗の写真なんて腐るほどあるし、作るのはそんなに苦じゃなかったかな。等身大だっていうから5万円くらい?』


「金使うとこおかしいだろあいつ…。で、なんの用だ?」


『夜斗に頼まれてた監視装置なんだけどさー。昨日光学侵入検知装置から発報あったんだよね。侵入者とかいた?』


「いや?なんならカメラあるだろ?」


『それがなーんもうつってなくて、念の為に確認したかったの』


「そうか。まぁ、窓がこじ開けられたりとかはなかったぞ」


『りょーかい。じゃあ誤作動で処理しとくね』



通話を切り、夜斗はインターホンを鳴らした

出てきた来夏は昨日と似たような服装だったが、今日は黒いフリル多めだ

しかし来夏の雰囲気にあってるのだから、何とも不思議なものだ



「来たぞ」


「いらっしゃいませ、夜斗様。汚い部屋ですが、どうぞ中へ」



汚い部屋、とは言うが完璧に片付けられていた

というよりは物がほとんどない

目につくロフトベッドの下には、パソコンデスクとそれに載せられたデスクトップパソコン。そしてそのパソコンデスクの隣にタンスがあるだけだ



「物少ないな」


「私の記憶が戻ったときに捨てました。特に必要なかったというのが主な理由です」


「ほーん。まぁけど、参考資料として小説は何個か持っとくべきだな。あとお前の小説、出版決まったから覚悟しろ」


「締切がついてきますね…」



少し眉をひそめる来夏

部屋自体は1LDKの広めなもので、場所自体も1等地だ

来夏の両親は金持ちなのかと問うと、来夏は



「カテゴリーとしてはそうです。不動産管理をしており、このマンションも父の管理下にあります。ですが、私はこれを生前贈与されたので、ここの収益は私のものです」


「じゃあなんでわざわざ小説を書くんだ?」


「貴方様といれば、相応に物語が書けるからです。貴方様の魔力を辿ってあの会社に行き着き、持ち込みを決めましたし」



サラッとすごいことを言って、来夏はクローゼットの前に夜斗を呼んだ

そしてその扉を開くと、中にはとある刀があった



「これ…あの桜の丘に刺さってたやつ、か…?」


「肯定です。これを霧桜様にお渡しすれば、ワームの撃退も容易になることでしょう。ですが、夜斗様は武装がございません」


「大問題だな」


「ということで、まずは戦闘用武装を手にしなくてはなりません。ので、とある神社に行きます」


「…まさか…」


「肯定です。桜嶺神社。夜斗様の、育ての親が営む神社になります」



来夏はそう言って笑ってみせた

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