第2話
「夢か。中々に難しい夢だなぁ」
ここはマンションの一室。とはいえ親はおらず、妹が2人同居している
「…とりあえず自動取引の方再確認するかぁ」
夜斗はパソコンに向かい、起動したままのソフトを確認した
為替取引を行うそのソフトは、夜斗の手によって組まれたもの
失敗したことはなく、利益は今月だけでも100万にも上っていた
「これだけあれば、生活やら
夜斗はそう言いながらパソコン前を離れ廊下に出た
廊下といっても目の前に扉があり、その奥にはリビングダイニングキッチンがある
夜斗の部屋の左に紗奈、右側に朱歌の部屋があるのだが、彼女らはもう起きているはずだ
「早いもんだ。まぁ学生ならそんなもんか?」
夜斗はリビングに足を踏み入れた
そこにいたのは妹たち。つまりは紗奈と朱歌の2人だ
「お兄ちゃんおはよ。ぐっすり寝てたわね」
「なんで部屋入ってんだよ朱歌。学校か?」
「今日は仕事。というか1ヶ月は仕事よ」
「どういうことだ」
「高校が休みになるのよ。時期的に、中学生の受験シーズンだから」
「なーるほどな」
夜斗は紗奈が持ってきたお茶を飲みながらテレビの電源をつけた
特に何かあるわけではない。天気予報まできて、見るのをやめた
「紗奈は予定ある?」
「特にはありませんね。お兄様とデートしたいところですけど」
「締切」
「すみません今日中に書き上げますごめんなさい」
紗奈は小説家だ。そして夜斗は編集者として紗奈の執筆を管理する立場にある
為替取引で金稼ぎをしているとはいえ、夜斗も一般会社員として働いているのだ
「そういや紗奈、今日すごい夢見たんだよ」
「なんですかヤブから棒に…。朱歌が仕事行った瞬間ですね」
「あいつ気にして仕事に身が入らなくなる」
「たしかに…。どんな夢だったんですか?」
朱歌が仕事に向かったため2人になったリビングで、夜斗は紗奈に朝の夢を話した
「悲しい夢ですね」
「なんか夢の中の俺、全て知ってるみたいな感じしてたな。家とかめっちゃ壊れてる理由はよくわかんなかったけど、丘の上に桜があったーとか」
「そういえば、私たちの育て親の家はそういう神社でしたね。桜があったとされる場所で、桜を祀るための神社…。しかも結構大きめでしたよね」
「そういやそんな感じだったな。いい人たちだけど、あんま負担かけられないから出てきちゃったしなぁ…」
「今度行きましょう」
「そうだな」
夜斗は少し目眩を感じた
なにか、ノイズが入るような感覚
(…なんだ、これは…?)
「お兄様?」
「あ、ああ…なんでもない。じゃあちょっと会社行ってくる。今日持ち込みがあるんだよ」
「そうなんですか。デートは無理ですね…」
「まずしないよ?」
「え?」
「え?」
顔を見合わせる夜斗と紗奈
そして同時に笑い出す
「わかってますよ、お兄様。では、いってらっしゃいませ」
「ああ、いってくる。俺の帰宅までに書き上げたら添い寝してやる」
「冬風紗奈、本気出します」
「まじか…」
夜斗は玄関を出て深呼吸。すると同時に喉を刺す冷気に顔をしかめた
(冬、か。いいものだ。桜のある春には劣るがな)
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