第63話
「いきなり恋バナって…今じゃなくてもよくないですか? ダンジョンの中だし。」
「何を言ってるの! こういうのは今だからすべきなの! さっ、蓮也ちゃんとリリアちゃんの恋バナ聞かせてちょうだい♪」
「そんなこと言われても…なぁ、リリア?」
「…?」
リリアは恋バナが何なのか、いまいち理解していない様子で可愛く首を傾げていた。
「んもぅ、二人ともノリが悪いわよ? しょうがない、こうなれば私から話させて貰おうかしら♪」
何やらスイッチが入ったライラが熱く語り出した。
「そう、あれは私がまだ、駆け出しの冒険者だった時の話しよ。 冷たい雨に打たれながら街を歩いていたの。その時のパーティに、とても美しい女性がいて…」
ライラは目を閉じて、当時の事を思い返しながら語っていた。
しかし、蓮也とリリアは慣れない環境のせいか、疲労からくる眠気と戦っている。
それに気付く様子もなく、熱弁するライラ。
しかし、話を聞くにつれて二人は次第に恋バナ《話》に惹き込まれた。
「それで、最後は彼女の幸せを願って別れたの。 だから私は、私のやりたいように生きようって決めたのね…。」
「そんな事があったんですね…」
「寂しい話しね。」
「ふふっ、でも、あの恋がなければ、私は私になれなかったわ。」
ライラは鼻を啜りながら、落ち着くために深呼吸をする。
暫くして落ち着いたのか、今度は目を輝かせながら口を開いた。
「それで、蓮也ちゃんの初恋は!?」
「えっ、いや、俺の初恋なんてどうでもいいですよ!」
「そんな事ないわよ! 人の初恋聞いておいて自分は内緒なんて、随分冷たい話じゃない?」
「そうよ、蓮也。 私も気になるわ。」
「リリアまで!?」
思わぬ伏兵にたじろぐ蓮也。
二人の圧に推され、渋々ながら口を開いた。
「あの、その、俺の初恋は…」
「初恋は…?」
「実は、その、最近まで恋がなにか分からなくって、向こうじゃ一人で生きていけたし、一人が好きだったから。」
少し照れながら、そして何故か苦しそうに言う蓮也に疑問を覚えた二人だが、静かに蓮也の言葉を待っていた。
「でも、こっちに来てからリリアと出会って、心から信頼出来る人が隣に居るって凄い有難い事なんだって知ったんだ。」
「蓮也ちゃん…」
「いつ死んでもいいし、思い残すことも無いと思って生きてきたけど、今はリリアが居るから一緒にこれからも生きていきたいって思うんだ。」
「蓮也…」
「なんて言うかその、上手くは言えないんだけど、俺はリリアが傍に居てくれるだけで幸せだなって。」
「私もよ、蓮也…」
「いやもう、そこまで行ったらそれは愛よ…」
見つめ合い、今にも二人の世界に入り込もうとする蓮也とリリアに、冷静に一言ツッコミを入れるライラであった。
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