第60話
「ライラさん、待ってたってどういうことですか?」
「そのままの意味よ、二人がダンジョンに行くって聞いたから案内しようと思ってね♪」
にっこりと微笑むオネエさんであったが、蓮也はひとつ気になる事があった。
「ライラさん、俺達がダンジョンに行くって誰から聞いたんですか?」
「あら? 修ちゃんから聞いてない?」
「修ちゃんって、もしかして…」
「鈴原 修也。 蓮也ちゃんの父親だったなんて、運命感じちゃうわね♪」
「ライラは修也とどんな関係なの?」
「元パーティメンバーよ。 私、昔は冒険者もしてたの。 修也ちゃんとはその時出会ったのだけど、すっかり意気投合しちゃってね。」
「ライラさん冒険者だったんですか!?」
衝撃の事実に思わず叫んでしまった蓮也に、悪戯が成功した子供のような笑みを浮かべるライラ。
蓮也がリリアにも視線を送ると、何やら納得して頷いていた。
「あら? リリアちゃんは驚かないのね。」
「う〜ん、前から何か違和感があったのよ。 普段の歩き方とか、人を避ける時の身のこなしとかね。」
「き、気づかなかった…」
「さっ、それよりも早く行きましょう! 久しぶりのダンジョンだけど、たっぷり案内してあげる♪」
ライラは蓮也とリリアの腕を取り、強引に歩き出した。
たたらを踏みながら着いていくと、すぐに目的のダンジョンへと辿り着いた。
「ここがダンジョンの入口よ!」
「これが、ダンジョン…」
「へぇ、雰囲気あるわねぇ。」
そこには洞窟の入口の様な大きな穴が空いていた。
蓮也とリリアの二人は暫くじっとその穴を見つめ、ライラが隣で首を傾げていた。
「どうしたの? 入口をそんなにじっと見て。」
「…あぁ、ごめんなさい。 つい懐かしくてね。」
「懐かしい?」
「俺とリリアは出会った時、洞窟で暮らしてたんです。」
「あの頃が懐かしいわね。 ついこの間なのに、随分と昔のように感じるわ。」
「そうなのね。 けど、中に入るときっと驚くわよ♪ さっ、早くはいりましょう?」
とても楽しそうな笑みを浮かべるライラが先行してダンジョンへと入る。
それに遅れぬようすぐに後を追うと、目の前の光景に唖然としてしまう。
「な、なんで洞窟の中なのに空が…?」
「ね、驚いたでしょ?」
真っ青な空に、まるで森のように澄んでいる空気。
洞窟の中のような雰囲気は一切なかった。
「これは一体、どういう原理なんだ…」
「ダンジョンだから、で納得して貰うしかないわ。」
「ふふっ、本当に面白そうだわ。」
「上の階層は特にめぼしい物はないから、サクッと十層まで降りましょうか♪」
こうして、初めてのダンジョン探索は始まったのであった。
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