第59話



リビングへ戻ると、既に食事を終えていた修也と蓮華はそそくさと家を出た。

騎士の朝は早いらしい。

残された蓮也とリリアは、麻里と雑談をしながらゆっくりと食事を楽しんでいた。


「そういえば、二人は宿で生活してるのよね?」


「あぁ、大熊の宿にお世話になってるよ。」


「そっか。 もし、もしもの話なんだけどね? 蓮也ちゃんとリリアちゃんの二人が良かったら、旅に出るまではうちで過ごさない?」


少し潤んだ瞳と上目遣い、なんともあざとい母親に苦笑いする蓮也。

リリアの方を見てみると、花が咲いた様な笑みを浮かべていた。


「えっと、リリアは…問題なさそうだね。」


「ええ、蓮也の家族は皆いい人達だもの。 昨日も楽しかったし、賑やかな家族っていいものね。」


「なら、暫く世話になろうかな。」


「やった〜! 母さん嬉しいわ! 今晩は蓮也ちゃんの好きなハンバーグにしましょうね〜♪」


麻里は鼻歌を歌いながら洗い物をしに台所へ向かう。

それを目尻に蓮也とリリアも身支度を済ませる。


「それじゃ、行ってくるよ。」


「お土産楽しみにしててね。」


「は〜い。二人なら大丈夫と思うけど、怪我には気をつけてね!」


上機嫌な麻里に見送られ、二人は街へと繰り出した。




「そうか、生き別れていたご両親とあえたのか! いい事じゃないか!」


「えぇ、今までお世話になりました。」


「またご飯食べに来るわね。」


街へと出た二人は、ダンジョンに挑む前に大熊の宿へ来ていた。

事情を説明すると、ジョンは我が事の様に喜んでいた。

部屋に置いてあった荷物を片付け再び食堂の方へ降りると、悲しそうな顔をしているネネが二人の元へと駆け寄った。


「二人とも、出ていっちゃうの?」


「えぇ。 けど、また来るわよ。」


「本当に?」


「あぁ、今度来る時はお土産を買ってくるよ。」


「ホントに? 約束だよ?」


悲しそうな顔はなりを潜めて、いつも通りの笑顔に胸をなでおろした蓮也とリリアに、ジョンが申し訳なさそうに声をかけた。


「二人とも、すまんな。 ネネがこんなに懐くなんて今まで無くてよ、これからも仲良くしてやってくれると嬉しい。」


「良いのよ、私達もネネのことが好きだからね。」


「そうですよ、ジョンさんが謝る必要はないですよ。」


「ありがとう、今度来る時はたっぷりサービスするからな!」


「楽しみしてるわね。」


「それじゃ、また。」


「おう! またな!」


ジョンに別れを告げ、大熊の宿を後にする。

そして、遂にダンジョンへ向かって街の外へ出ると意外な人物が待ち構えていた。


「はぁい♪ 待ってたわよ、お二人さん♪」


そこに居たのは、長い髪を靡かせながらウィンクしているオネエさんが居た。




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