第57話



「…」


「…」


「「ニヤニヤ」」


「あの、ニヤけるの辞めてくれる?」


「いやぁ、こんなに熱いものを見せられたらなぁ。」


「母さんも昔を思い出すわぁ。」


「頼むから辞めてくれ…」


ニヤニヤと見つめる両親に、蓮也は熱くなった顔を手で覆う。

暫くその反応を楽しんだ麻里は、思い出したかのようにご飯が冷めちゃう!と慌てて料理を盛り付ける。

慣れた手つきで配膳を終え、テーブルの上には多くの料理が並んでいた。


「とても美味しそうね! これは何て料理なの?」


「これは和食って言ってね、私達の故郷の料理よ。」


「和食? 確かニツケだったかしら?」


「そうそう、煮付けも和食よ。 私達の故郷の伝統料理って言えばいいのかしらね?」


「さて、料理も揃った事だし早速食べるか!」


「あぁ、私もお腹が空いたよ。」


「それじゃあ…」


「「「「「いただきます。」」」」」


一同は並べられた料理に箸を伸ばす。

蓮也とリリアは近くにあった肉じゃがを口に入れると同時に叫んだ。


「「美味い〜!」」


「久しぶりの母さんの味だ。」


「とっても美味しいわ!」


「あらあら、ゆっくり食べてね。」


蓮也とリリアの箸は止まらず、舌鼓をうちながら箸を進めていく。

目の前にあった御馳走は、気が付けば綺麗さっぱり無くなっていた。

食器が下げられ真理が全員にお茶を入れると、修也は湯呑みを傾けながら蓮也とリリアに問い掛けた。


「そう言えば、ダンジョンにはもう行ったのか?」


「ダンジョン?」


「あぁ、隣町にあるんだ。まだ攻略された事がないから、2人なら攻略出来るんじゃないか?」


「う〜ん、リリアはどう?」


「蓮也が行きたいなら行くわ。」


「興味はあるかな。」


「なら行きましょうか。」


「そうだな、明日にでも出発しようか。」


「おや? 2人はダンジョンに行くのかい?」


明日の予定が決まった所で、いつの間にか居なくなっていた蓮華が話に加わった。


「それは結果が楽しみだね、あそこのダンジョンは稀に魔卵まらんが手に入るみたいだよ。」


「魔卵?」


「魔物の卵さ。 滅多に手に入らないけどね。」


「それはちょっと、気になるかも。」


リリアも興味が湧いたようで、蓮華と2人で話し込んでいた。

女同士だからか、すぐに仲良くなっている2人を微笑ましく見ていると、父親である修也が話しかけてきた。


「それで、子供はいつ頃なんだ?」


「ブフゥ!」


飲んでいたお茶を吹き出した蓮也は、口を拭いながら修也を睨んだ。


「おいおい、そんな怖い顔をするなよ。孫の顔を見たいと思うのは仕方ないだろ?」


「そう言うの、周りが急かすのは良くないよ。」


「あら、でも母さんも早く見たいわねぇ。」


「いや、2人して詰めてこないでよ!? リリアも何とか…」


「…」


リリアに助け舟を求めようとそちらへ振り向くと、そこには顔を赤くしながら満更でも無さそうなリリアが、蓮也をチラチラと見ていたのであった。




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