第55話





王城を後にした蓮也とリリアの2人は大熊の宿へと戻った。 中に入ると、真っ先に2人の存在に気が付いたジョンが駆け寄ってくる。



「お前ら大丈夫だったか!?」


「ただいま戻りました。」


「そんなに慌てないで、大丈夫だったから。」


「騎士がうちに来る事なんて無かったからな、無事でよかったぜ…」



深くため息をついたジョンであったが、思い出したかの様に手を叩く。



「そうだ、蓮也にこれを渡しておかねぇとな!」


「…これは?」


「前に地図が欲しいって言ってただろ? さっき倉庫の整理をしてたら出てきたんだ、俺には必要ないから持ってけ。」


「すみません、助かります。」



ジョンから手渡された地図を広げると、テーブルいっぱいのサイズで事細かに国や地域の名称が書かれていた。



「…この魔族領ってなんですか?」



蓮也が指さした場所には魔族領としか書かれていなかった。



「あぁ、その名の通り魔族達が住んでる領域の事だ。 2年前までは死の森と並ぶ程に恐れられていたが、友好条約を結んだんだ。」


「友好条約、ですか。」


「魔族の連中とは大昔から因縁があってな。 小競り合いばかりだったが、俺も昔は戦場に駆り出されてたもんだ。」


「それがどうして急に?」


「何でも、どっかの貴族様が使者として送られて、気に入られたとか何とか。 詳しいことは俺にもわかんねぇがな!」


「魔族領ねぇ、初めて聞いたわ。 ちょっと行ってみたいかも。」


「まだ貿易も始めたばかりだから、観光出来るようになるのはまだ先だな。そんじゃ、俺は仕込みに戻るわ。」



ジョンはそう言って厨房の中へ入ると、蓮也とリリアの2人も部屋へと戻るのであった。



「それにしても、いいもの貰ったな。」


「そうね、地図なんて初めて見たわ。 こんな風になって居たのね。」



2人が地図を床に広げて眺めていると、聞いた事のある地名が載ってあった。



「このイグニスって、確か港町って言ってたよな?」


「そうね、次はここに行く?」


「この世界の海鮮料理は食べてみたいな。」


「ならここに行きましょう! この間のニツケも美味しかったし、今から楽しみだわ♪」



地図を広げて話をしているといつの間にか日が落ちており、部屋の灯りをつけると扉がノックされた。



「蓮也さーん! リリアさーん! お客さんが来てますよ!」


「あっ、直ぐに行きます!」



広げて居た地図をアイテムボックスに仕舞い、ネネに続いて1階に降りると、入口付近には私服に着替えた修也と蓮華が待っていた。




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