第54話




「可愛い妹が出来て蓮也も嬉しいだろう?」



ニヤニヤと笑う修也に思わずイラッとした蓮也だが、1度深呼吸して妹である蓮華に向き直る。



「えっと、初めまして。 蓮華ちゃんって呼んだらいいかな?」


「そんな他人行儀に呼ばなくても、蓮華で良いよ。それと、そちらの彼女は兄さんの彼女さんかい?」


「そうよ、私はリリア。 好きに呼んで構わないわよ。」


「なら姉さんと。 ふふっ、一日で兄と姉が出来るなんて、不思議な事もあるものだね。」



それから暫く話をしていると、頃合を見計らって修也が口を開いた。



「 紹介も済んだことだし、俺達は仕事に戻るぞ。 今晩家に来てくれ、母さんも居るからそこでゆっくり話そう。」


「あぁ、大熊の宿で待ってるから仕事が終わったら来てくれ。」


「ふぁ〜、話は終わった?」


「済まないなジョゼフ、って涎が出てるぞ。」


「ごめんごめん、いつの間にかちょっと寝ちゃってた。」



欠伸を噛み殺しながら目を擦るジョゼフ。最初に感じた威厳というものが一切無くなっていた。



「さて、仕事に戻るか。 行くぞ蓮華。」


「あぁ、兄さんと姉さんはまた後で。」


「また後でね。」



修也と蓮華の2人が出て行くと、ジョゼフが口を開いた。



「さて、こっちも本題に入るよ。 蓮也くん、リリアちゃん、是非我が国の騎士として、僕に仕えてくれないかな?」



人の良さそうな朗らかな笑みを浮かべてそう言ったジョゼフに対して、蓮也は申し訳なさそうな顔をして答える。



「その、申し訳ないのですが、お断りさせていただきます。」


「理由を聞いてもいいかな?」


「私は国に使えるにあたって、こちらに来て間もないので愛国心がありません。 それに、リリアとこの世界を見て回りたいのです。 」


「…ふぅ、断られるとは思ってたけど、やっぱり惜しいなぁ。リリアちゃんも、この感じだとダメなんだろう?」


「勿論よ、私は蓮也と共に生きるのだから。」


「お熱いねぇ、ご馳走様。」


「その、すみません…」


「気にしないで。 あっ、でも、困った時は助けてくれると嬉しいな。」


「はい、父もお世話になってますし、何かあったら微力ですが協力します。」


「それが聞けただけで満足だよ! さて、本当は城を案内してあげたいんだけど、仕事が溜まっててね…」



ジョゼフが扉の方を見ると、数人の家臣達が書類を抱えてやって来た。



「お忙しい中ありがとうございました。 」


「仕事頑張ってね。」


「働きたくなーい! …はぁ、また次来た時はゆっくり案内するよ。そうそう、そこの報酬を忘れず持って帰ってね!」



そう言って目の前に出来た書類の山へ体を向けたジョゼフに頭を下げ、アイテムボックスに報酬を仕舞い込み王城を後にしたのであった。





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