第53話





「やっぱり、蓮也だよな!?」


「お、落ち着けって! 」



蓮也の父親らしき人物は、勢いよく蓮也に抱きついた。蓮也は急展開な事態に着いていけず、かなり混乱していた。



「蓮也もこっちに来たかぁ、父さんは嬉しいぞ! また家族みんなで暮らせるな!」


「皆って、母さんも来てるのか?」


「あぁ、また後で連れて来るよ。それと、もう1人紹介したい人が居るんだが…」


「紹介したい人?」


「んんっ!」



蓮也とその父親である男性が話をしていると、大きな咳払いが聞こえる。 蓮也の父親はプレートアーマーを被り直し、何事も無かったかのようにジョゼフの隣へ戻った。



「さて、本題に戻るが、其方等の功績を称えて大金貨5000枚を贈呈する。」


「ありがとうございます。」


「ありがとう?」


「うむ、今後の働きに期待しておる。これを以て贈呈式を終了とする、皆持ち場に戻るがよい。」



ジョゼフがそう言うと、並んでいた騎士は部屋から出ていった。 残ったのは蓮也とリリア、そしてジョゼフと蓮也の父親だけであった。



「さて、騎士団長よ。 詳しく話してくれるか?」


「あぁ、それは構わないけど、その喋り方何時まで続けるんだ?」


「確かに、この喋り方は息苦しくて仕方ないね! そんじゃ、シュウちゃん説明よろしく〜。」



急に人が変わったかの様に軽くなったジョゼフを見て、蓮也とリリアの2人は困惑していた。



「ジョゼフは何時もこんな感じだ、気にするな。それより、話をしようか。」


「あぁ、頼むよ。」


「俺と母さんは25回目の結婚記念に旅行へ行っただろ? その時にハイジャックにあってな。 そんで、飛行機のエンジントラブルも重なって、運悪く墜落したと思ったらこっちの世界に居たんだ。」


「それで?」


「そっからは生きる為に必死だったよ、毎日魔物と殺し合っては死にかけて。 そんな事をしてたら偶然ジョゼフと知り合ってな、いつの間にか騎士団長なんて地位まで来てた。」


「シュウちゃんとは長い付き合いだよね〜、20年位はなるかな?」


「20年? おいおい、親父達が居なくなって5年しか経ってないぞ?」


「体が若返ってたからな。だが、この20年でお前を忘れた事は1度もない。1人にして、済まなかった!」



プレートアーマーを脱ぎ捨てた父親は、目尻に涙を浮かべて頭を下げる。そして、蓮也は困った様に口を開いた。



「…別に、今はもう気にしてないから。 昔は色々と思う所はあったけど、2人が幸せに暮らしてたならそれで良いよ。」


「蓮也…」


「それに、今は俺も幸せに暮らしてるからさ。」



そう言ってリリアの肩に手を回す蓮也。 すると、リリアが口を開いた。



「リリアよ。 それにしても、よく見てみると似てるわね。」


「親子だからな、蓮也の彼女か? 随分と綺麗な娘を掴まえたもんだ。 俺は修也、気軽にお義父さんと呼んでくれ。」


「分かったわ、お義父さん。」


「お義父さん…いい響きだな。」


「んんっ! それより親父、さっき紹介したい人が居るって言ってたけど誰なんだ?」


「ん?あぁ、忘れてたよ。 連れてくるからちょっと待っててくれ。」


「その必要は無い。 それより、愛娘の存在を忘れるなんて、酷い父親だ。」



声がした方へ蓮也が振り向くと、そこには二十歳前後の女性が居た。 若干の幼さを残しつつも美しい女性が蓮也に歩み寄る。



「丁度良かった、紹介するよ。 この子は鈴原 蓮華れんげと言う。 早い話がお前の妹だ。」


「初めまして、お兄様。 以後宜しくね。」


「あぁ、こちらこそ宜しく。 …って妹!?」



いきなりの出来事に驚愕する蓮也を見て、悪戯が成功した子供のように笑う修也であった。




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