第52話




「陛下のお客様です、客室に通して下さい。くれぐれも無礼の無いように。」


「ハッ! 」


「それでは1度失礼します。 また準備が整いましたらお呼びに参ります。」



王城へ辿り着き、門番へ指示を出したアイナは足早に城の中へと入っていく。 残された2人は門番に連れられ客室へと案内された。部屋の中を見渡すと、リリアが口を開いた。



「ねぇ、蓮也。」


「どうした?」


「あそこにあるのって何かしら?」



リリアが指差した先には、白い日本刀が置かれていた。 近くに寄ってみると傷も汚れもなく、丁寧に手入れされている様だった。



「俺も武器には詳しくないけど、多分日本刀じゃないかな。」


「ふぅん、抜いてみる?」


「流石に駄目かな、何かあったら困るし。」



蓮也とリリアは暫く日本刀を眺めていると、扉がノックされた。 返事を返して扉が開くと、アイナが姿を現した。



「蓮也殿、リリア殿、お待たせ致しました…おや、その剣が気になるのですか?」


「そうなのよ、1度手に取っても良いかしら?」


「構いませんよ。 それは団長が前に使っていた聖剣なのですが、急に使えなくなったので飾ってあるだけですし。」


「使えなくなったってどういう事ですか?」


「聖剣には意思がありますから。 簡単に言うと、担い手を選ぶんです。」


「意思、ですか。」


「えぇ。騎士団の全員が抜けるか試しましたが、誰一人として抜くことは出来ませんでした。持つことは出来ますので宜しければどうぞ?」



アイナにそう言われ、蓮也は日本刀を手に取り柄を握ると、なんの抵抗もなく刀を抜くことが出来た。



「あれ、これって抜けないんじゃ…?」


「抜けたわね。」


「…」



抜けた刀身を見てみると、滑らかな曲線と波のような紋様がが何とも言えない美しさを放っていた。



「これ、良いな…」


「似合ってるわよ♪」


「…」



ある程度眺めた蓮也は刀を鞘にしまい、元にあった場所へ戻す。 先程から喋らないアイナに視線を向けると、目を開けたまま固まっていた。



「アイナさーん? おーい。」


「…はっ! あれ、おかしいですね、先程蓮也殿が剣を抜いた様に見えたのですが?」


「はい、抜けましたよ。」


「…後で団長に相談します。 陛下を待たせて居りますので、着いてきてください。」



頭を抑えながら歩き出したアイナに続くと、すぐに大きな扉が見えてきた。 控えていた騎士が扉を開くと目の前には騎士が道を作っており、正面には王冠を被った恰幅の良い中年の男性が椅子に座って居いた。



「其方等がレッドドラゴンを討伐した冒険者であるな。」


「はい、蓮也と申します。」


「リリアよ。」


「うむ、良き名じゃの。余はジョゼフ・J・リンベルク、この国の国王である。 此度の功績は「蓮也!?蓮也なのか!?」」



ジョゼフは微笑みながら名乗ると、その隣に控えていた騎士が割って入ってきた。 その騎士は勢いよくプレートアーマーを脱ぐと、所々に白髪の交じった黒い髪に赤みがかった黒い瞳をしていた。



「…親父?」



蓮也は死んだはずの父親が目の前に居ることに、動揺せざるを得なかった。





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