第22話





「さて、とりあえず髪を縛るか。」


「そうね、ここだと邪魔になるからあそこのベンチに座りましょう。」


「そうするか。あぁ、そういえばさっき女神様から祝福して貰ったから、また宿に帰ったらステータスを見ないと。」


「祝福? 初めて聞くわね、後でゆっくり見ましょうか。 あっ、あそこのベンチが空いてるわ!」



空いているベンチを見つけて座る2人。 早速髪を縛ろうとするも、不慣れなせいか上手く纏められない。

すると後から声をかけられる。



「もし、そこの貴方? 良かったら私が結ってあげましょうか?」



低い声で話しかけられる。誰だろうと不思議に思い振り返る。



「ふふっ、そんなにも驚かないで良いじゃない?」



襟元にレースの着いた白いシャツに、ぴっちりとした黒いズボン。 長い赤色の髪の毛はポニーテールにしており、ぱっと見た感じは女性に見えるその人が、連夜達に笑いかける。



「あ、いえ、大変お綺麗で驚きました。」


「あらぁ? 貴方ってば見る目があるじゃない♪」



どうやら蓮也に声を掛けた人物は、オネエさんだった。オネエを見たことがないリリアは、口を半開きにしながら目をパチパチさせている。



「そ れ よ り ! 髪も伸びっぱなしだし、前髪くらいは切っておきましょうか。」


「いえ、そこまでして頂くのは申し訳ないので、お気持ちだけ頂いておきます。」


「気にする事はないのよ、これは私の感謝の気持ちでもあるんだから。」


「どうゆう事ですか? 初対面のはずなんですが…」


「話は髪を切ってからにしましょう? 安心して、今まで沢山ヘアメイクしてきたから♪」



そう言ってウィンクをして、何処からかハサミを取り出したオネエさんの圧に負け、大人しく髪を切られる蓮也だった。






「はい、出来上がり〜♪」



渡された手鏡で自分の顔を見る蓮也。



「(この顔、久しぶりに見たな…)」



元々、蓮也の顔はかなり良いのだが、蓮也は前世で、所謂ブラック企業に務めていた。その為、目の下の隈は1度出来ると消えることがなく、寝不足のせいで目付きが悪かった。しかし、こちらに来てからは食事もちゃんと出来て、睡眠も十分取れていた。



「あらぁ、これは予想以上になったわねぇ♪」



顎の下まであった前髪は、目の下辺りまでになっており、左に流していた。右側の髪は耳に掛けており、後ろ髪も後頭部で纏め上げられていた。



「蓮也の顔、久しぶりにちゃんと見たわね 。」



尻尾を振りながら、リリアが笑顔でこちらを見つめてくる。



「はいはい、イチャつくのは後にしてもらって、まずは自己紹介をしましょう。」


「あ、そうですね、申し遅れました。 鈴原 蓮也と申します。わざわざ髪を切って頂いてありがとうございました。」


「良いのよ、目の保養になったしね♪」


「私はリリアよ。 それより、貴方は一体何者なの?」


「何者だなんて、失礼しちゃうわねぇ! 私の名前はライラよ。通りすがりの美人な お ね え さ ん ♡ そうそう、後は」



ライラは2人を見据えてこう続けた。







「錬金ギルドのマスターもしているわ。」



先程、レインから注意するように言われた人物であった。









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