第20話





「お久しぶりです、シルヴィア様。」


「ええ、お久しぶりです。 貴方のことは観ていましたよ。 フェンリルを虜にするなんて、思ってもみませんでした!」



そう言って楽しそうに笑うシルヴィア。 前に会った時のような事務的な対応ではなく、知人と話す時のような気軽さだった。その対応の差について違和感を覚えていると



「あぁ、前はこちらのミスで貴方を死なせてしまいましたから、あのような対応をとらせて頂きましたが、普段はこんな感じですよ?」



神様にもTPOはあるらしい。



「そちらの方が親しみやすくて良いですね。 神様に向かって失礼な考えかもしれませんが。」


「良いのですよ、 そんな事を気にする神はあまり居ないでしょう。寧ろ、神は長い時間を過ごしているので退屈しているのですよ。 ですから、少し話し相手になって下さい。」



すると、何も無い空間からテーブルとイス、そしてティーセットが出てきた。



「こちらにどうぞ。」



1人と1柱は向かい合うように座った。



「さて、まずは参拝に来ていただきありがとうございます。 数々の転生者を送ってきましたが、元々信仰の少ない世界に居たせいか、来てくれた方は1人もいませんでした。」



少し悲しそうな顔を浮かべるシルヴィア。 しかしすぐに笑顔になり、蓮也を見据えた。



「ですので、私は本当に嬉しいのです! 貴方のように、純粋な心を持つ人の信仰が!」


「たいした事ではないですよ。 寧ろ、俺もこっちの世界に来てから毎日が楽しくて、シルヴィア様にはとても感謝しているんです。 ありがとうございます。」



頭を下げる蓮也に、シルヴィアは目を細める。



「本当に、貴方は清廉な方ですね。嘘も媚びもなくそう言える人間はなかなか居ないでしょう。そうですね、折角来てもらいましたし祝福をしましょうか!」


「祝福って、なんですか?」


「加護の上位互換だと思ってください。 とはいえ、祝福をするのは初めてなので、どのような効果が表れるかは分かりませんが。」



徐に立ち上がるシルヴィアが両手を広げ目を閉じる。 そして、静かに唇を開いたと同時に景色が変わる。蓮也の遥か下には青い球体があり、ここが遥か上空である事を理解した。




【世界に告げる。シルヴィアの名に於いて、鈴原 蓮也に祝福を! 】



蓮也が光に包まれた。 暫くすると、何事も無かったかのように光は収まった。



「さて、祝福を与えた事ですし、ゆっくりとお話をしましょう! あぁ、下界なら時を止めてますから心配要りませんよ?」


「そうですか、少し気になってましたけど、それなら時間を気にすることもありませんね。」



それから蓮也とシルヴィアは話に花を咲かせるのであった。








「それではシルヴィア様、また来ますね。」


「えぇ、何時でもお待ちしてます。」



シルヴィアが笑顔で手を振っている姿を見ていると、意識がゆっくりと沈んでいった。









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