第122話 男性からの告白を考える:結局、告白っていう行為はろくなもんじゃない

 “告白”って何のためにしますか?


 “恋人関係で交際をはじめたいという願い”だろうか、“好きな人の気持ちを確かめたいという欲求”だろうか、はたまた“単に体が欲しい”だけか・・・・・・、普通に考えれば、そういう理由が多いのではないかと思う。


 僕のこれまでの人生において、女性に愛を告白したことは・・・・・・、おそらく片手くらいはあった。多いか少ないかは、それぞれ感じるところであろうが、それほど多い数字ではないと思う、むしろかなり少ない。

 だから、もう少し丁寧な説明が必要になるが、告白をするまでもなく仲の良い関係になった女性もいるし、好きで好きでたまらなかったけれど告白できなかった女性もいるし、もっと言うと、わざと告白をせずに雰囲気だけで付き合った女性もいる。さらにさらに言うと、好意的な感情をまったく持たずともカラダだけの関係というのも、まあ若いころだったらなくもなかった。


 要するに、告白をせずとも付き合ったり、関わりを持ったりした女性も一定数いて、そういう人の方が圧倒的に多かったということである。そう考えると、“告白”自体が、僕にとってはレアな経験だったと言えなくもない。


 そんなことを言うと、「コクらずに付き合ったなんて、なんてムシのいい、きっと責任を取りたくないからだ」と考える人がいるだろう。その意見に真っ向から反論できる根拠は、はっきり言ってないが、確かに僕の性格から考えて、告白は面倒くさいという感覚はあった。

 そういう儀式的なプロセスを経ずとも、こうしていま仲良くできているのだから、それでいいではないかという気持ちだ。


 女性は、きちんと告白されてから付き合いたいと願っている人の方が多いのだろうか・・・・・・。おそらくはたぶん、いやきっとそうだろう。相手の男性の気持ちや覚悟を受け取ることで、この人の愛情の度合いがどの程度なのかを推し量り、付き合いの尺度を決める。深く愛されているなら深く愛し返すし、そうでもないならそれなりの対応しかしない。

 それが悪いと言っているわけではなく、そうすることで自分と相手とのバランス、もしくは距離感を考え、交際方法を決めていった方が精神的な負担は軽減される。


 ダラダラ前置きが長くなってしまった。

 今回は、僕が、これまでに関わせてもらった女性のなかで、“告白した人”と、“してない人”との違いがどういうところにあったのかを考えてみたいと思う。つまり、「付き合いたい」と感じた女性に対しての告白をした人と、しなかった人との差だ。

 先に述べたように、告白をしなかったから付き合えなかったということでは必ずしもないし、告白をせずとも付き合った人はいる。もちろん、告白したけれど付き合えなかったという人も、当然ながらいる。


 結論から言うと、告白をした人のなかで、その愛に実際に応えてくれた人というのは――“付き合えた”と言い換えてもいいが――、僕の記憶のなかではゼロだった。要するに、“コクった女性には全員フラれていた”という驚愕の結果だった――逆に言うと、交際まで発展した女性は、すべて告白をせずに恋人同士になったということだ。

 普通だったら、勝算の確率が見込めるから告白に踏み切るケースが多いだろうけれど、僕にとっての告白は、もはや玉砕覚悟での最終的なアタックだったのだ。だいたいは、ダメ元で、断られることを前提にコクっていたのだ。

 最近で言えば、『第85話 異動の季節から:言葉を濁したまま退職して』で述べたように、相手の女性は、僕の気持ちとは裏腹にぼんやりと言葉を濁して異動してしまった。


 仲が良いなら、言葉などなくともとっくに交際しているものだし、僕の場合の告白というのは、これから恋愛をはじめられるという期待よりも、いまのこの気持ちに区切りをつけたい、この恋に終止符を打ちたいという理由で実行することの方が圧倒的に多かったということだ。

 確かに、脈なしがわかっているのに告白する目的として、“次の恋に進むためのケジメにする”や、“告白することで恋愛経験値を積む”という、こじつけもあることはある。相手から明確にフラれるまでは、心のどこかで「もしかしたら可能性があるかも」と未練を持ち続けてしまうこともあるし、過去にフラれる経験をしていれば、その痛みに耐える覚悟を持てるようになるということもある。

 玉砕覚悟、失恋前提の告白にもメリットがないわけではない。


 が、しかし、本当にそれだけだろうか?

 確かに勝手な想いで告白しても、された方にとっては「いい迷惑」ということがあるかもしれない。だから、その行動に関しては慎重であるべきとは思う。

 にも関わらず、成功する可能性が限りなくゼロに近いとわかっていて告白するという理由は、いったいなんだろうか?

 よく考えてみると、それは相手に対して何かしらの特別なメッセージを残したいという気持ちがあるからである。単なる友人、知人という、その他大勢的な関係で終わらせるのではなく、「僕は、あなたに対して特殊な感情を抱いていました」という記憶を、半永久的に先方に留めたいという期待、もっと言うと願望がある。せめてそうすることで、“畏敬の念”を伝えておきたいということである。

 こう言ってはなんだが、僕が好きになった女性だから、たいていは控え目で大人しくてシャイでがんばり屋が多い。だからおそらく、普通にしていてもモテるはずで、僕なんかよりよっぽど素敵な男性とめぐり合っていると思う。


 女性たちに言いたいのは、告白されたからといって「キズ付けずにどうやって断ろうか」なんて悩む必要はない。平気でフッていただいて構わない。こっちは、それを前提としているし、結果は想定済みである。その代わり、コクられたという事実を忘れないで欲しい。そしてもし万が一、あなたが人生のどこかでつまずいたとしたら、迷わずその告白してくれた人物を頼って欲しい。必ず力になってもらえるはずだ。

 もう一度繰り返す。“男”からみた場合――「“僕”からみた場合」と言った方が正しいか――、仲良くなった女性に対しては、告白なんていうさして意味があるとは思えないことはしない。そうではなくて、好きだけれどその願いが叶えられそうもない女性にのみ、告白には価値が生まれる。愛を説いておくことで、この先何かあったらいつでも頼っていいということを、記憶としてインプットさせる最良の方法ということだ。そうやって僕は、初恋の人からいろいろと学ばせてもらった(『第99話 初恋から3:家族も認めてくれたことが背中を押して、お付き合いをはじめました』)。


 それからもう一つ、逆に女性において、告白してもらいたいと願っている人がいたとしたら、それはその愛の行方に自信がないということを自覚した方がいい。相手の気持ちがわからないから、言葉による確証を得たいのである。そのことを素直に認めるべきであり、早晩その愛は終焉を迎えるということである。


 結局、告白っていう行為はろくなもんじゃない。あくまで自然に楽しく付き合えていればそれでいいのではないか。愛の囁きなんてモノは、あまり付き合いには関係ないと僕は思う。

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