片想いの委員長からのご褒美




「いやぁ、買いましたね?」


「ああ、スイーツコーナーであんなに誘惑されるとは思わなかった」


 二人で購入した飲食物の合計金額は、予定の二千円を軽く超した。

 デカいサイズの飲料水にプラスチック製のコップ、あとはスナック菓子数個と決めていたが、委員長の言う通りコンビニには誘惑が多かった。


 俺はパンコーナーでジャンクなハンバーガーやカツサンドに目が行き、委員長はスイーツコーナーで、ケーキやシュークリームと甘い物を自然とカゴに入れていた。


 結果、三千八百円と、約四千の買い物となってしまった。


「これ、食べきれるだろうか?」


「大丈夫ですって。もし余ったら持って帰るか、自分が食べますから」


「そっか。期待してるぞ?」


「任せてください!」



 あーーーーーーーーーッ!! 楽しッ!!!



《うるさい》


 ごめん。


 内心はしゃぎまくる度に黒瀬に注意を受けつつ、学校に戻ってきた。

 今の時間は十時四十分、まだ余裕だ。

 買い込んだ飲食物を風紀委員室まで運び、換気として窓を全開する。

 室内に気持ちの良い風が入り込み、疲労した体が癒えるのを感じた。


「それじゃ、始めようか!」


「はい!」


 開始の掛け声で、袋から2リットルの炭酸ジュース、それにお茶、そしてポテトチップスにポップコーンといったスナック菓子をパーティー開けする。

 互いのコップに飲み物を注ぎ、準備は完了した。


「では、白瀬初ボランティア活動終了を祝って、かんぱ~い!」


「かんぱ~い!」


 互いにコップを軽く当て、一気に飲み干す。


「ぷはぁー!」


「あ~、染み渡りますね!」


 疲れた体に甘い物が効く感覚が伝わってきた。

 しかもコンビニの冷蔵庫に入っていたため、キンキンに冷えてて尚美味く感じる。


「はぁ、この一杯を風呂上りに飲んだら更に美味いだろうな」


「それは犯罪的美味さになりますね……!」


「そうだろ……!」


 そこから数秒黙り込み、互いに我慢しきれず噴き出して笑う。



 あーーーーーーーーーッ!! 楽しッ!!!



《うるさい》


 ごめん。



 それからは二人でスナック菓子を摘まみつつ、適当に駄弁っていた。


「白瀬は、どうしてこの学校に入ったんだ?」


「そうですねぇ……。進学校ってこともありましたが、正直に言うと、家から近かったからです」


「あはは、一番良い理由だな」


「そういう委員長は、どうして紅高に入ったんですか?」


「ああ、両親の母校だから行くように言われてな」


「へぇ、ご両親どちらも紅高の卒業生だったんですか……」


「そうだな。だが、私は元々ここに入る予定は無かったんだ」


「そうだったんですか……!?」


「ああ。空気を壊すようで申し訳ないが、私は両親があまり好きではない。それで、せめてもの反抗で他の公立を受けたのだが、落っこちてしまった」


「行きたかった公立のほうでは、なにかやりたいことがあったんですか……?」


「特になにも無い。ただ、そこは県外の高校だったから、受かってしまえばあとは家を出て一人暮らし出来ると思ってな……」


「…………」


「あはは、白瀬は優しいな?」


「はい?」


「普通のヤツなら、どうして両親と仲が悪いのかを聞いてくるはずだ。だが聞かれたところで、そういうプライベートなことは一切話したくない。けど、白瀬は黙って聞いててくれた」


「ははは……」



 重すぎて何も言えないだけですッ!



 なんとかこの空気を打破しないと……。

 そうだ―。


「委員長、スイーツ早く食べないと、温まってしまいますよ!?」


「お、そうだったな。温かくなったスイーツは、あまり美味しくないからな」


 袋からイチゴのショートケーキを取り出し、フタを外した。


「白瀬も食べるか?」


「いただいても良いんですか?」


「ああ、温かくなる前に教えてくれたお礼だ」


「ありがとうございます。あ、でも、フォークが……」


 二本お願いすれば良かった……。



「心配するな。ほら、あ~ん」




 ……………………………………………………………………………………………………え?

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