サクシウ〇光線




「なに!?」


 委員長が声を上げる。


「マズいぞ……。紛失しないことを条件に借りてたから、これが知られたら次回からの拝借は無しになる……」


「ということはぁ、来月から持参って形になりますね~?」


「はぁ……。なにをしているんですか」


「ど、どっかに……お、落としたんでは……?」


「シロ、一緒に探しに行こ?」


「ああ、そうだな……!」


 琴葉に言われ、駆け出す。


「シーくん、ウチも一緒に行くよ~?」


《ぐるっしゃああああああああああああああああああああああああああああああああ》


 はい落ち着いて。


「大丈夫ッ!」


 黒瀬には重要な探査の役割があるし、コハ姉が付近にいて機能してもらえなかったら時間が掛かってしまう。

 もし見付からなかったら、ホームセンターに行って自腹で返そう。

 琴葉とさっきの場所に到着し、探し始める。


 焦ってしまっている分、散漫しているのは嫌でも分かった。

 黒瀬、見付けられそうか?


《う~ん……多分蜜柑もらった辺りだと思う》


 あそこか!


「あ、ちょっとシロ!?」


 琴葉の呼び掛けを気にも留めず、先ほどご高齢の女性に感謝された場所に向かう。

 誰かに回収されてなければ良いけど……。


「あったッ!」


 そして寂し気に地面に倒れているトングを発見した。

 あ~良かった!

 これで小遣い使わなくて済んだ!


 すると──。



「マジ? マージマジマジマジーロ? マージジルママジジンガ?」



 大抵の会話を成立させられる魔法の言葉を連呼している屈強な男性が横切った。


 そして──。




 カランッ




 目の前で平然と空き缶を捨てた……。

 その光景を目にした瞬間、耐え難い怒りが込み上げてきた。


 せっかく掃除をしたばかりなのに……。


 昔母親が、掃除し終わったリビングで、カップ焼きそばのソースを零した中学生時代の俺を、血祭りにあげた理由が分かった気がした。


 邪魔になると思い、渡されたときから手に装着していた【光波熱線発射装置】を起動させる。

 黒瀬ッ!


 《あいよ》


 黒瀬が熱線を放つためのポーズを取り始めた。

 左腕を上に、右腕を横に伸ばす。

 そしてL字型に組むと、右手側面のガラスが発光。


 これは……サクシウ〇だな……。



《シュアッ!》



 白色の光線が発射され、直進した



「マジ? ジルママジマジーネ? マジーロマジカ!」



 屈強な男は未だ魔法の言葉を連呼している。



















 グッバイ……!




「マ──ああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ…………」




 雄叫びを上げ、それがまた徐々に聞こえてこなくなった。

 光が晴れると、跡形もなく消えていた。


「シローッ!」


 後ろから琴葉の声が聞こえた。

 手に伝わってくる熱が冷めるまで、入れ替われない。

 黒瀬は光線の余韻に浸っているのか、L字型を保っている。


 まだか?


《もうそろそろ……。おっけー》


 どうも。


「シロぉ、急に走り出してどうしたの? 見つかったの?」


「ああ……」


「あれあれ? なにかあった? 顔怖いよ?」


「いや、ちょっと……」


「んぅ?」




「〝ゴミ〟の始末をしただけ……」

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