科学部に誘拐された
目を覚ますと拘束されていた。
椅子に座らされ、四肢は鎖でぐるぐる巻きに脚に固定されている。
黒瀬、何秒で壊せそうだ?
《…………》
黒瀬?
《…………》
おーい。
《…………》
返事が無い。
ただの役立たずのようだ。
《〝あッ?》
おはよう。
《あ…………。おはよう……》
いくつか質問あるが、まずこれを解いてくれないか?
《ヤダ》
じゃあ質問に移る。ここはどこだ?
周りは薄暗い。
しかしアイマスクを付けられている訳でもない。
ということは室内か……?
《教えられない》
じゃあ質問その二、付近に人の気配はあるか?
《…………知らない》
はい、科学部決ッ定~。
《なんで分かったんだ!?》
ヒントその一、頼みを断った。
ヒントその二、場所を教えなかった。
ヒントその三、とぼけた。
=黒瀬が大好きなモノ→科学部。
明確だ。
《クソぅ……爪が甘かったか……》
バカなだけだろ。
《んだとぉ!?》
抑えて抑えて。で、これから何されるんだ?
《それはまだ分からない》
というか、どうやってここに連れてこられたんだ?
《覚えてないのか?》
ああ、昨日徹夜せずに寝ちまったところまでは覚えてる。
その後の記憶が無い……。
《じゃあ順を追って説明していくぞ》
あれ? 俺より早く起きてた感じ?
《まぁ聞いとけ》
①お前が目覚めると科学部の『しゃ行』女とロボットが部屋に居た。
②薬を飲まされる。
③咄嗟に入れ替わったが、お前だけ意識を失う。
④連れてかれる。
《以上だ》
うん、次からは住居不法侵入を疑おうか。
となると……俺が今いるここは部室か?
それにしてはいつもの実験台とかが見当たらない。
薄暗くても、カーテンで光を遮断し切れないから、多少は中の様子が見えるはずだ。
《俺が見た限りじゃ、通学路とは違う道を通ってたぞ》
え、じゃあまさか―。
瞬間、カッ! と周りが一気に明るくなり、眼球が悲鳴を上げる。
「ぐおっ!?」
反射的に瞼を閉じ、目の回復を待つ。
この演出、いい加減やめてほしい。
そのうち視力落ちてしまう。
「白石白瀬!」
視界はまだ瞼の裏だが、呼び方で誰だか判明した。
取り敢えず声の方向から目の前にいることは理解できた。
「よくも昨日は無断欠席をかましてくれたな?」
「あれ? 紅葉から休むこと聞きませんでしたか?」
目の痛みが無くなり、薄目で開ける。
当然のように薬師堂部長がいた。
そしてのその隣に、ツインテールフォームの紅葉が立っていた。
「伝えるのがめんどくしゃかったので、わしゅれてました!」
もう少しマシな言い訳をしようか……。
「まぁ例え欠席連絡が入ってたとしても、こうやって拉致る事には変わりなかったがな!」
《やったぜ!》
マジか……。
「というかここ……どこですか?」
「ふっふっふ、ここは我が薬師堂家のプライベートルームだ!」
殺人現場の間違いじゃないのか……?
「本来ならお茶を出したいところだが、めんどくさいから紅葉の毒薬でもあとで飲んでおいてくれ」
隠す気ゼロか。
「ここに用意してありましゅ!」
そして相変わらず体に悪そうな色の液体が入った瓶を紅葉は嬉しそうに持っている。
《飲ませて!》
あとでにしろ。
「さぁ、昨日キミが来なかった分、今日一日まるごと使って〝この子たち〟の餌食になってもらおうじゃないかッ!!!」
部長が手で後方を示す。
視線を集中させると、そこには様々な形の鉄ロボが並んでいた。
《キャーッ!!!》
黒瀬が興奮しだす。
多分、アレ全部壊したいんだろうなぁ……。
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