生徒会の会計くんはどれだけ嫌われてるんだ






「白石くん、更正させてくれたようで感謝はするが、とんでもないモノを生み出してくれたな……」


「すみません、あの先輩たちは今後自分が注意していきます……」


「頼んだ……!」


 サムズアップにサムズアップで返す。


「よ、余計に白石くんを……手放したくなくなりましたね?」


「分かりませんよ……。臭いで思考が狂って目に見るもの全てを破壊してしまうとか……」


 今の国見がその状態だ。

 未だに鼻を摘み続けている。

 それから十分、変わらず生徒に避けられつつもチェックを続けていると、車道に一台の車が停車した。


 よく見ると、昨日自宅の前に停車して尚且つ乗車した黒い高級車だ。

 運転席からスキンヘッドの黒服が降りてきたから、同一のものと判断して良いだろう。

 昨日と同様、一切無駄の無い動作で後部座席に移動し、ドアに手を掛ける。



「チ……ッ!」



 途端、隣に来ていた委員長が大きい舌打ちをした。

 敵視満々な表情を浮かべている。


「お嬢様、到着いたしました……」


 ドアを開けた黒服が、同乗者に声を掛ける。


「ご苦労様です」


 労いの言葉を口にしたあと車から出てきたのは、八乙女生徒会長―。


「ありがとうございます」


 と、船岡だった。

 え……なんでアイツも……?

 船岡が車内から出てきた瞬間、登校途中の女子生徒たちが興奮の声を上げ始める。

 アイドル会場のような盛り上がりだ。


《おい》


 どした?


《来るぞ》


 なにが?


《あのイケすかねぇ野郎を狙う銃弾だ》


 船岡……スナイパー雇われるまで嫌われてるのか。

 アイツなら避けれるだろ。


《いんや、アレは避けれねぇ》


 なにを根拠に?


《アイツが避けたら、そこのボイン姉ちゃんに風穴が開く》


 ボイン……会長のことか。

 じゃあどうする?

 助けるのか?


《まぁそれもあるが―》


 が……なんだ?



《銃弾を一回口で受け止めてみたい……!》



 お前漫画の読み過ぎ……取れるのか?


《取れる自信100パーセント。失敗したらゴメン》


 そんときはお互い天国で会おう。


《おっけー……!》


 はい、出て来てどうぞ。



 ダァン



 銃声音が轟き、正門前にいた生徒数十名が悲鳴を上げ、咄嗟に耳を塞ぎ、しゃがみ込む。

 反射神経でこれだけの統率力が取れているなら今の日本は大丈夫だろう。知らんけど。

 一方、音と同時に会長たちの前に出た黒瀬はというと―。



《…………やったひぇ(やったぜ)!》



 上下の歯で銃弾を見事に挟んで受け止め、余裕の感想を吐いた。

 あ、黒瀬、興味本位で先っぽ舐めないで。交代後に俺にまで味伝わってくるから!


《くぁわうぉうか(代わろうか)?》


 当たり前だ! 早く引っ込め!


《ふぁーい(はーい)》


 うげ、まっずッ!?

 銃の弾ってこんな味するのか……確かに二度と経験できないモノだけど経験する価値は無い!


「ペッ」


 入れ替わってから車道に銃弾を吐き出す。口の中にまだ鉄味が残っている。

 げぇ……気持ち悪い。

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