早起き

 目覚めは当然悪い。


 しかし五時には起床できた。

 就寝前に家中の目覚ましをかき集め、スマホの目覚まし音も音量MAXにし、鼓膜死ぬぞ状況を作った甲斐があった。


《毎朝これはヤダぞ?》


 俺だってヤダ。


 早く慣れておかないと、近いうち聴覚がおかしくなる。

 目覚めが悪い&耳鳴りが続く状態ではあるが、俺は朝の日課を実行する。


「黒瀬、対談だ。短く済ませるぞ」


《まさか、今日から毎日この時間でやるのか?》


「当たり前だ。時間が無いんだ、時間が」


《うげぇ……》


 黒瀬が呻くもお構いなし。自室の中央に移動し、胡坐をかく。


「分かってるな? 今日も一日、俺が呼ぶまでは出て来るなよ?」


《分かってるって。なぁ……そろそろコレも終わりにしないか? 毎朝毎朝同じ台詞で聞き飽きたぞ?》


「お前が勝手に出て来るからだ」


《けど昨日の科学部の時はファインプレーだっただろ?》


「アレはありがと、素直に感謝するわ」


 黒瀬が笑う……ように見えた。


「だから昨日みたいに危ない状況になったら出て来て良いぞ。それ以外はダメだ」


《へいへい……》


「終わるが、なにか無いか?」


 《なにも……》


「オッケー、それじゃあ今日も一日」


《よろしくお願いしまぁす》


 これにて対談は終了。

 カーテンを開け、外の景色を視界に入れる。

 日の出始めで辺りは薄ら暗い。起床時間より早く起きてたまに見る光景だ。


 これから毎朝、この景色を目にするのか。

 そう思うとレア感も薄れてくる。


『しろ…………』


 妹の声がドア越しに聞こえた。

 どうやら目覚ましで一緒に起きてしまった様子だ。

 向こうも目覚めが悪いようで声は不機嫌たっぷりの低音だった。


『毎朝これだったら……毎朝顔面にパンチ入れるからね……』


「ごめんなさい……」


 対面しなくても感付いた殺気……明日は大音量に頼らず自力で起きよ……。


《昨晩は俺も悪かったごめんなちゃい》

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る