副委員長は俺を受け入れない様子だ




「えぇっと……」


 言葉に詰まる。


「あはは、突然こんなこと聞いてすまない。だが、昨日の一件から私はキミを見込んでスカウトをしに来たんだ」


「そ、そんな……。自分に風紀委員なんて務まりませんって」


「謙遜する必要はない。私たちですら対応に困っていた、西が率いる三年生集団に制裁を加えてくれたんだ。キミには充分な素質があるよ」


「そ、そうですか?」


「ああ、キミさえ良ければ直ぐにでも入ってもらいたい。どうだ?」


「えっと……お気持ちは有り難いんですが自分は―」


「生徒会か?」


「あ、知ってたんですか?」


「当然だ。キミの情報が欲しくてチェックしていたからな」


 意外な事実を聞いて思わずニヤ付きそうになった。


「白石くんが生徒会に入ったのは分かっている。だがどうしてもキミの力が必要なんだ!」


 更に距離を詰められ、互いの胸部がくっ付きそうになる。

 ただでさえ速くなった鼓動が、更に速くなるのを感じる。


「勝手かもしれないが、生徒会のほうを諦めて風紀委員のほうに入ってはもらえないか?」


 昨日よりも新田先輩の顔が近付いてきた。


 え、どうしよ!?

 本当にどうしよう!?



 ⇔SELECT

 ●風紀委員に入る

 ●いいえ、断らせていただきます



 変な選択肢を出すな!


《けど今の状況こんなんだろ?》


 まぁ、確かにそうだけども……。


《それに生徒会のほう、どうするんだ?》


 だから今そのことを考えてるんだちょっと黙っててくれ!


 さあ、どうするべきか……。

 正直風紀委員も生徒会と同様活動内容に興味は無い。


 しかし憧れの対象である可愛い新田先輩と仲良くなりたい。

 風紀委員に入れば、校則違反する生徒を毎日相手にしなければならないから、ストレスがかかることは確実だ。

 その反面、先輩との距離が縮まる可能性はある。


 だが今の俺は生徒会により首の皮が一枚繋がっている状況だ。

 でもせっかくスカウトされたのなら風紀委員にも入りたい……!

 どうしよう……どうすれば良いんだ!?


「委員長、探しました」


「おお、麗奈」


 突然の国見麗奈の登場で先輩の意識は彼女に逸れ、気付くと俺は蚊帳の外状態にななった。


「やはり昨日の騒動が原因なのか、今日の校則違反者はまだ一人も出ていません」


 なんか気になる情報を耳にしたぞ。


「そっか、じゃあ昼休みの巡回はこれぐらいにして、お昼取ってきていいぞ」


「分かりました。お言葉に甘えさせていただきます。お疲れ様でした」


 律儀に頭を下げた。

 こりゃ作ってないマジもんのド真面目だ。

 そして顔を上げると、俺と目線が合った。


「あ、白石くん。いたんですか?」


「うん、いたよ。見えてなかった?」


「はい、すみません。委員長以外見えていませんでした」


 どんだけ視野狭いんだか。


「それと、昨日は大変だったそうですね。校則違反の常習者数人を相手に力で捻じ伏せたようで……おかげ様で今朝から校則違反者が出て来ていません」


 眼鏡のブリッジを指で軽く上げ、呆れた口調で発言してきた。


「それって、学園に貢献できてるってことで解釈して良いのか?」


 国見の眉間にシワが寄り、キッと鋭い目で睨まれる。


「勘違いをしないでください。わたしは力で物事を解決することが嫌いです。確かに問題視していた生徒を罰していただいたことに関しては風紀委員の一員として感謝致します。しかし、人を傷付けて解決する行為を素直に認めることはできません」


 距離を詰められ淡々と言われる。

 普通なら怯むところ、コイツも普通に可愛いから寧ろもっと言い寄ってきてもらいたい。


「麗奈、それぐらいにしておけ。それに、白石くんはもしかしたら今後風紀委員の新たな戦力になってくれるかもしれない人材なんだぞ」


「えッ!?」


 国見が新田先輩のほうに振り返る。



「まさか……昨日帰り際に『近々新しいメンバーを入れる』と、言ってた人って……」



 ぶるぶる震える指で差された。


「彼の事ですか……?」


 新田先輩が満面の笑みでサムズアップする。


「…………」


 相当ショックなのか黙り始めた。

 ひとつ良いか?

 俺のほうがショックなんだけどッ!!



「ひ……」



 ひ?



「必要ありませんッ!」



 まさに抑えていた感情を大解放した大声だ。廊下中に響き渡ったぞ。


「こんなコズミック男に頼るぐらいでしたら、わたしだけで充分ですッ! もし足りないところがあるのでしたら仰ってください! 全力で身に付けていきます!」


 そこまで歓迎したくないのか……。


「まぁまぁ、戦力が増えればその分仕事量も分担できて楽になれるぞ?」


「今の仕事量に不満はありません! 寧ろもっと増えても良いぐらいです!!!」


 おかしいなぁ、心が寂しいのか涙が止まらねぇや。


《アレ俺を全否定してるんだよな?》


 確かに暴力は黒瀬だが、お前のせいだけにするとそれも心痛くなるから二人で共有しよう。


《ありがと》


「とにかくッ! 今の風紀委員は現状維持でメンバーを増やす必要はありません!」


「まぁ最終的に決めるの私なんだがな?」


「…………」


 あ、黙っちゃった。


「まぁ白石くん、興味があったら今日の放課後にでも来てみてくれ」


「は、はい―」



 ギロッ



 国見の凄まじい眼光が俺をロックオンする。

 あれもうちょっと頑張ったらビーム出せそうだ。


「……もう行きましょう、お昼の時間が無くなってしまいます」


「おい、そんなに強く引っ張るなって。またね、白石くん」


 新田先輩の片手を国見が強く引っ張て行くのが分かった。

 とにかく現状風紀委員の仕事に興味はないが、憧れで片想い中の新田先輩からせっかくお誘いを受けた訳だし……放課後なにも無ければ行ってみるか。


《生徒会のほう、どうするんだ?》


 だからそれを言うな!

 今考え中なんだからさ!

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