新田先輩が俺に話し掛けてきた……!?
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【紅学園生徒のみなさまにご報告です。昨日の一件から彼は学園の平和を守ってくれたのだと強く捉え、ワタクシたち生徒会執行部は、一年B組の『白石白瀬』を生徒会・庶務として所属させることを決定致しました。】
何気なしにSNSを覗くと、タイムラインの一番上に前述の内容が表示された。
投稿時間は今から二時間前、しかもご丁寧に生徒手帳用に撮影した顔写真まで公開されている。
あの人、仕事早いな……。
あと誰かいい加減にプライバシー侵害を彼女に教えてあげて……。
気付くと昼休みも後半の時間帯まで進んでいた。
当てもなく来た二階廊下からふと中庭に視線を向けると、昼食を終えて校舎内に戻る生徒たちが視界に入った。
人が少なくなってきているなら中庭も散歩しようか……などと一人呆ける。
「白石くん」
聞き覚えのある声に呼び掛けられた。
この声……まさかッ!?
「やあ!」
新田先輩だ。
相も変わらず今日も可愛くて美しい……。
「あ、ど、どうもこんにちは……!」
反射的に腰を九十度に曲げ、頭を下げる。
「あはは、そんな畏まらなくて良いぞ」
「あ、はい……すみません……!」
姿勢を正し、新田先輩に視線を移したが照れ臭くて直ぐに逸らしてしまう。
やっぱ可愛い……!
「どうした? 顔が真っ赤だぞ?」
「いえ、あの……ちょっと今日暑いかな~って!」
額に汗が滲み出ているのが嫌でも分かった。
「そうか? 私は丁度よくて暖かいと思うが」
「え、えぇっと……自分体温高いですから!」
「そうなのか。それなら冬とかは楽そうだな」
「そ、そうかもしれませんね! は、はははッ!」
《相変わらずスゲェ動悸》
仕方ねぇだろ……!
憧れで恋する先輩が目の前にいて話してくれてるんだから、緊張するのも当たり前だ!
《へいへい》
「と、ところで、自分になにか用ですか?」
《声裏返ってるぞ》
気にするな。
「ああ、昨日は大暴れしたそうだな」
スカートのポケットからスマホを取り出した新田先輩が、例の画像を見せてきた。
「もうやめてください見たくありません!」
反射的に拒絶反応が出た。
まぁた傷口ほじくられるパターンか。
「安心しろ、別にキミをからかいに来た訳じゃない。少し話をしたいんだ」
「話……ですか?」
「そうだ。あ、紹介が遅れた。私は二年の新田麻美、風紀委員の委員長を務めている」
「知っています」
「あれ、そうだったか? 昨日自己紹介した覚えがないんだが……」
「いえ、学園のために毎朝活動してくれていますので覚えました」
実際は惚れた当初から個人的にリサーチしただけだけどね!
なんならスリーサイズも裏ルートから入手したから把握済みだ!
《変態かな?》
「あはは、嬉しいことを言ってくれるなキミは」
新田先輩が気さくに笑い返してくれる。
可愛いッ!
《分かったから落ち着けって……》
落ち着いてられるか!
こんなに可愛い人と話せてるんだぞ!
なんなら今ここで叫びたい気分だ!
《不気味がられて一生避けられるだろうな》
そんなはしたないことをするはずがないだろう。
お前はアホか?
ゴミか?
消えちまえ。
《ぶっ飛ばすぞ……?》
出来るのでしたらご自由に。
「ところで白石くんは、所属クラスはどこなんだ?」
「あ、えっと……一年B組です!」
「お、ということは麗奈と一緒のクラスか」
「は、はい、そうです!」
「いやぁあの子は一年生の割によく働いてくれて助かってるよ。生真面目なところが偶に面倒くさいけど」
「あ、あ~分かります。教室でも机に座ってる奴や、黒板を消し忘れた日直とかに厳しく注意してますからねぇ」
「そうなのか、あの子自分のことは話そうとしないからな」
そして二人で軽く笑う。
え、なにこの平和な会話。
「おっと、話が脱線してしまった。本題に入らせてもらう」
「はい、なんでしょうか?」
新田先輩が一歩距離を詰めてきた。瞬間ドキッとした。
え、なに?
もしかして突然の告白?
昨日の男っぽい喧嘩見て惚れちゃったって感じ?
ほほほーーー!!!
この白石白瀬にもバラ色の人生が?
え、全部黒瀬がやってくれたことじゃないかって? 知らん。
《テメェこの野郎……》
ワナワナする黒瀬のことはほっとき、俺はこの瞬間を脳内に刻むため脳みその容量を増やすアップデートを実施し始める。
ヤバいヤバい緊張してきた!
今日サボる予定だったけど学校来て良かった!
弁当忘れて廊下散歩してて良かった!
そもそも昨日不良どもに目付けられて良かった!
暴力騒動を起こしたら誰も話し掛けてこなくなって恋愛もできなくなるとかは、さすがにマイナス方面過ぎたな。
中にはこうやって力に見惚れて恋愛感情を抱いてしまう人だっているんだよ。
キャー嬉しい!
キャーキャーキャーッ!!!
「単刀直入に聞く。風紀委員に興味は無いか?」
「……………………………………………………………………………………。」
黒瀬が爆笑しているのが嫌でも分かった。
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