暴走の翌朝
琴葉:『ねぇ、昨日シロ三年生の先輩たちに暴力振るったんだって? SNS上でスッゴク話題になってるよ……?』
琴葉から添付されてきた画像は、確かに俺……というか黒瀬だった。
紅高の生徒のみ利用可能なSNS上でのアカウントは、これまた琴葉の言う通り俺の名前が公開されまくってる……。
そこから住所特定や両親の勤務先まではコメントされていなかったのが幸い。
そりゃそうだもんね……前述のプライバシー侵害をした生徒は退学処分どころか、人生まで処分されるって噂されているからね……。
ははは~、それにしてもよく撮れてるな~。
丁度良い打ち上げシーンじゃん……コレ……。
ははは~!
昨日の風呂が気持ち良かった。
昨日の焼肉が美味かった。
ゲームが楽しかった。
漫画が面白かった。
布団がふかふかだった。
尊い夢を見れた。
今日学校行きたくねぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!
昨晩ひたすら楽しいことをして辛い過去を忘れようとしたが、やっぱ記憶消去はされなかった。しっかり上書き保存されていました!
「どうしよどうしよ……。今日から絶対アダ名が付いてる……。どうしよどうしよ……」
頭をどれだけワシワシ掻いても記憶は消えない。
昨日不良先輩たちを黒瀬が倒してしまい、そこを色んな人たちに見られてしまった。
登校すればクラスメイトも含め、『暴力』に因んだアダ名で呼ばれるはずだ。
候補はなんだ?
暴力マン?
バイオレンスマン?
スパイダー
想像したくないのに想像してしまう。なんだこれは病気か?
ベッドから起き上がって三十分が経過した。
いつもなら朝食と歯磨きを済ませ、着替えている頃だ。
脳内の黒いモヤモヤは消えず、寧ろ増すばかり。
『シロちゃ~ん、起きてるの~? 早くしないと学校遅刻しちゃうわよ~?』
今日は珍しく母親の声が聞こえた。
いつも起こしに来てくれる妹の呼び掛けを三回も無視したから、心が折れて母親とバトンタッチしてきたのだろう。
とにかく今はノックも呼び掛けもやめてくれ。考えに集中したいんだ!
だから俺は無視を決める―。
バキャッ
母親の手が自室のドアを破り、すかさず中指を立てられた。
「白瀬……お母さんにこれ以上迷惑かけないでね……」
「はい……」
ドス黒い声音に、従う返事をすることしかできなかった。
悩んでいたモヤモヤよりも母親に対しての恐怖が上回り、用意されていた朝食を口に突っ込み、着替えを済ませて出掛けた。
日差しを昨日と同様受けながら、一言呟く。
「黒瀬……今日こそ〝絶対〟出てくるなよ?」
《無理》
ですよね。
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