第三十話 リペアハート姉妹の不在

「――――――ッ!」


 ガッ!


「―――ッ、何をする⁉」


 気が付いたら思わずトーマスの顔を殴り飛ばしていた。


「昨日角笛が吹かれて、リペアハート姉妹は救助済みなんだろう⁉」

「吹かれてねぇよ! まだ、彼女たちはこの火山のどこかにいる! 隊長!」

「聞いてた」


 ボスから逃げきったエマ達がハルの元に合流する。

 エマはアタッチメントから冒険申請書を取り出し、『グロッド』のメンバーを見渡す。


「彼の言うとおりね。二人足りない。申請書には十二人。レイス・リペアハートと、ファイ・リペアハートの名前がちゃんと書かれてる」

「てめ……っ!」


 頭に血が上り、もう一度トーマスを殴ろうとするハルの前にメイディが割って入る。


「どこ⁉ どこでリペアハート姉妹と別れたの⁉」


 自分の何倍もでかい大男の胸倉をつかみ、鬼気迫る形相で問いつめる。


「さ、三層……だ。第三層……」


 何とか答えると、メイディは突き放した。

 ハルはあるモノを思いだした。


「溶けた角笛があった……」

「え⁉」

「マグマに溶けた角笛が沈んでた。誰かが姉妹の角笛を盗んでマグマに棄てたんだ」

「この野郎!」


 メイディがトーマスを睨みつける。


「そんなことが……? じゃあまだ二人は救出されていないんだな⁉」


 ようやく事態が呑み込めてトーマスが動揺する。


「誰だ⁉ 誰がやった⁉」

「今はそんなことはどうでもいい! 急ぎましょう! もう時間がない!」


 メイディが駆け出し、


「ああ!」


 ハルが後に続く。


「そうね。クソッ、こういう時に人材不足が響くわね……! ハル、メイディ。貴方たち二人は三層に行ってリペアハート姉妹を救出しなさい! 私とハザードはこっちの要救助者を運んでから向かう!」

「そいつらなんてほっときゃいいでしょ! どうせすぐ生き返るんだから!」

「黙れ‼」


 ジッと、エマがハルを睨みつける。


「いきなさい」

「…………」


 余りの迫力に何も言えず、逃げるようにハルは三層へ向かった。

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