第二十一話 食事会終わり、別れ
リペアハート邸での食事会が終わり、ハルは帰り支度を始める。
「今日は本当に助かったよ。お金がなくて本当にどうしようかと……」
玄関の前でリペアハート姉妹が見送りに来てくれた。
レイスは一礼をしてハルに微笑む。
「いえ、それに給料日になるまでしばらくおなかがすくでしょう? なんなら、毎日食べに来てもいいですよ。そのたびに御馳走しちゃいます」
「いいの⁉」
ハルにとっては願ってもない提案だが、
「あ……」
「………」
ファイはしかめっ面をしてハルを見ている。彼女は当然反対……、
「フン、餌をもらいに来たけりゃくればいいさ」
「え、来てもいいのか?」
餌といういい方はちょっと癇に障るが、何故だが認めてもらえた。
「来ればいいって言ったでしょ」
そして、フッと笑った。初めて見たファイの笑みだった。
「あ、ああ、また来るよ。じゃあ……」
その心変わりの理由が分からなかったが、来ていいというのならありがたい。彼女の言葉に甘えさせてもらうことにして、家を出る。
満腹になった腹を撫でながら、思わずにやける。腹も満たされたし、あんないい子たちと仲良くなれたのだ。笑みを浮かべずにいろというのが無理な相談だ。
「ちょっと待ちなさいよ!」
ふと、ファイから呼び止めらる。
「ん?」
家から飛び出したファイが路上で振り向いたハルにつかつかと歩み寄ってくる。彼女はハルの手前で止まると、「フン」と鼻を鳴らして、そっぽを向く。だが、その頬には少し赤みがかかっていた。
「あんた意外といいこと言うじゃん」
「へ?」
いきなり褒められて戸惑う。犬猿の仲のはずだと思っていたのに、猿が急に犬を褒めてきたような感じだ。
「お姉ちゃんができるって。そうなんだよね、あの人自信がなさすぎるんだよね。だから、あんたなんかでも自信をつけるきっかけになってくれたら、嬉しいかなって」
「なんかでもとはどういう言い草だ」
「へへ」
いたずらっぽく笑った。
その笑みに、ついあっけにとられてしまう。まさか、自分の前でそんな表情をファイが見せるとは思っても見なかった。
「お前の自信を、姉に分けて上げられればいいんだけどな」
「ちょっと、それはどういう意味よ」
笑いながら、ファイに脇を小突かれた。
あっさりと打ち解けられたのはこちらとしては大歓迎なのだが……、
「姉を褒めるとあっさり心許すなんて、お前ちょろいなぁ……」
「あん? 誰がチョロインだって⁉」
小突きが段々腰の入った正拳突きになっていき、ハルは脇腹を痛めた。
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