第十九話 リペアハート姉妹の家へ
ほぼ毎日のように繰り返される飲み会ですっかり金欠になってしまった。
エマの誘いを断って露店通りに行って食材を仕入れるしかなくなった。
「はぁ……一握り600ゴールドは高いなぁ……節約しないといけないっていうのに」
肉屋の前で途方に暮れる。自炊をしなければいけないのだが、料理なんて今までしたことがない。
「現実世界にいるときも、いつもコンビニ弁当ばっかだったからなぁ……クソ、こっちの世界ってコンビニってないのかよ」
「うわ、独り言行ってるキモ」
すぐ近くで女の子から罵倒された。
「ちょっと、ファイ。失礼でしょ!」
「キモいやつにキモいって言って何が悪いのよ。お姉ちゃん、近寄っちゃダメよ」
リペアハート姉妹だ。二人共紙袋を持ち買い物帰りだろうか、ファイがレイスをかばうように手を広げてハルの前に立ちふさがっている。
「お前、本当に失礼な奴だな……いきなり人を捕まえてキモイキモイと……」
レイスは困り顔で頭を下げる。
「ウチの妹が本当にすみません。ハルさん、夕食のお買い物ですか?」
「ああ、いつも開かれる飲み会に参加してたら、金がなくなっちゃってね。これから節約生活さ」
「フン、ハイエナ隊は給料少なそうだもんね。その癖にいつも飲み会なんかしてたら、ソリャ金もなくなるわよ」
「何だとこの野郎……」
鼻を鳴らして挑発するファイに挑みかかろうとするが、レイスがなだめる。
「まぁまぁ、落ち着いてください。本当にすみませんウチの妹が……」
「お姉ちゃんは謝る必要はないよ」
「そうだ、こいつが全部悪いんだから、こいつにまず謝らせよう」
「誰がこいつだ! 指をさすな!」
指さすハルの手を払う、ファイ・リペアハート。
「てめぇ、なんだ? やるか?」
「おう、やってやろうじゃない!」
「あうあうあう……」
本格的に爆発しそうな二人の間で慌てるレイスだったが、紙袋を一旦、地面に置いてポンと手を叩いた。
「そうだ、こうしましょう」
「あん?」
「へ?」
にこりと笑い、
「ハルさん、今日うちに来ませんか?」
「…………」
顔を見合わせるハルとファイ。
「「えええええええええええええええええええっっっ‼」」
二人の声が初めてそろった瞬間だった。
○ ○ 〇
リペアハート姉妹の家は質素な一軒家だった。商店街から少し離れた裏通りにある薄暗い路地に面し、人通りも少なく、女二人だけだと危なそうだ。
「ただいま~」
レイスが玄関をくぐり、
「うん、おかえり。ただいま」
まだ外にいるファイが「ただいま」と「おかえり」を言う。
靴をしまいながら、レイスが微笑みかける。
「おかえり」
その顔を見つめて、ファイも表情をほころばせた。
———なんか、いいな。
「ただいま……」
「あんたはただいまじゃないだろ」
「う~ん……ハルさんはお邪魔しますかな……?」
ノリで言ってみたら総スカンをくらった。ファイの反応は予想できたが、レイスにも突っ込まれると予想以上に傷ついた。
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