第十四話 情けねぇ

「おお! ありがとう、救助騎士隊の人たち! 助かったよ!」


 鎧の男が両手を広げて救助騎士隊に感謝の言葉を述べ、


「本当にどうもありがとうございました」


 魔法使いの女が深々とお辞儀しながら礼を言う。


「どういたしまして、お二人共復活出来て良かったです。これからも冒険頑張ってください」

「は、ハハ……」


 エマが社交辞令的な返事をするのを、隣のハルは乾いた笑いを浮かべて眺めていた。

 ここは先ほどの霧の谷から一番近い村の教会。

 エマたち、救助騎士隊は冒険者男女の死体を教会に運び、パーティーリーダーであった男の方を生き返らせた。

 そして、戦士の男が金を払ってもう一人の魔法使いの女を生き返らせたのだ。


「そうだな……冷静になりゃ教会に行けば生き返らせることができたんだったな……」


 ドラゴンの巣で取り乱した自分が恥ずかしい。

 生き返った冒険者の男女が礼を言って去っていき、残されたエマ達も帰り支度を始める。


「そろそろ王都に帰るわよ」

「あ、はい、あの……メイディ……」


 おずおずとアリスに乗ろうとしているメイディを呼び止める。

 メイディは振り返るが、


「あの、その……」

「フン」


 言いあぐねるハルを待たずにロープを伝ってアリスに上って行ってしまった。


「あ……」

「は~い、初任務お疲れさん! じゃあ今日はハル君の入隊を祝って飲むわよ‼」


 肩を掴み胸を押し付けるエマ。

彼女は一見すると喜び歓迎しているように見えるが、それがハルを気遣っているようで、若干心が痛んだ。


「情けねぇ……」


 ハルの初任務はこうして終わった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る