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「……でも?」
「どんな明日香君も好きだよ。私は、目の前にいる明日香涼君が好きなんだ」
「……希ちゃん」
「明日香君が自由にしていいって言ってくれたから、うんと自由にさせてもらうね。ずっと明日香君から離れないから。覚悟しといて」
明日香君は私を見上げて、『フーッ』と息を吐き出した。
それって、呆れられてるのかな?
やっぱり、私って重い女の子なのかな。
強気で告白したけど、ちょっと自信喪失。
「俺、勘違いしていたみたい」
「……えっ?」
「みんなや希ちゃんの優しさは同情だと思ってたんだ。でも、亀田に言われて目が覚めた。素直じゃなかったのは俺の方だって気付いたんだ。希ちゃんにも同情されてると思ってたんだ」
「同情だなんて、酷い。私はこんなに明日香君のこと……」
明日香君は太陽みたいににこにこ笑ってる。こんなに笑ってる明日香君を見たのは、久しぶりだった。
「俺、リハビリ頑張るよ。また歩けるようになりたい。記憶はすぐに忘れてしまうけど、希ちゃんと一緒に海に行って砂浜を歩きたいし、色々な場所に行って、たくさんのものを見たい」
「……明日香君。必ず歩けるようになるよ。一緒に砂浜を歩こうね。色々な場所に一緒に行こうね」
笑顔でいようと思っていたのに……。
涙がポロリと頬を伝う。
明日香君が右手をスッと伸ばし、その指先で涙を拭ってくれた。
「ありがとう……」
濡れた頬を、風が優しく撫でる。
明日香君が差し出した手のひらに、そっと手を重ねた。
明日香君が私の手をギュッと握ってくれた。
明日香君が長い眠りから醒めた時に、私の手のひらをギュッと握ってくれたことを想い出した。
その時の感動が……。
胸を熱くする。
明日香君の大きな手のひらを、ギュッと握り返した。
明日香君は少し驚いていたけど、力強く頷いた。
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