「希、また最高点なんだ。凄いなぁ。どうやって勉強してるの? 塾も家庭教師もしてないでしょう。自力で最高点なんて、羨ましいにもほどがある。けど、私も頑張るよ、補習。だから、希も頑張りな」


 遥は笑いながら小さくガッツポーズをした。


「えっ? 補習を頑張るの?」


「明日香君だよ。あの紙飛行機、明日香君が見つけたらきっと運命だよね」


 運命……かな?

 答案用紙だよ?


「遥も田中君に運命感じてるの?」


「や、やめてよ! あいつだけはパス! 全然タイプじゃないし、大体ああいうタイプはウザイっていうか、ガチャガチャ煩いっていうか、それより希の幼なじみの亀田達哉かめだたつや君のほうが絶対カッコイイよ」


 幼なじみの達哉君は高身長でアイドルみたいにかっこいい。それは私も認める。達哉君も明日香君と同じ光鈴大学だ。


「スポーツマンでイケメンだし。光鈴女子高に亀田君のファンクラブがあるんだよ。知ってる? ファンクラブの会長は……あの千春なんだ」


「知ってるよ。私が達哉君と幼なじみだって話したら、凄く驚いていたから」


「そうなんだ。もしかしてそれが虐めの原因? まさかね、それって希に責任ないじゃん」


 電車通学の私は最寄り駅から徒歩で光鈴女子高に通い、明日香君は公立藍田高校に自転車で通っていた。


 明日香君はいつも数名の友達と一緒で、私のことなんて気付かない。私の片想いを応援してくれたのは遥と千春だった。


 私が明日香君に逢いたくてこっそり藍田高校の文化祭を見に行ったことも、サッカーの試合を見に行ったことも、明日香君と同じ大学に行きたくて志望大学を変えた事も、明日香君は知らない。


 遥は明日香君と同じ藍田高校に通う友達に、明日香君の名前や生年月日を聞いてくれた。


 明日香君は四月一日生まれで、二日に生まれた私と一日違い。一日しか違わないのに、学年は一年も異なる。四月一日が早生まれ扱いになるなんて、一体誰が決めたんだろう。


 同じ四月生まれなのに、同級生になれなかった明日香君と私。

 でも光鈴大学が男女共学になったことで、私達が同じ大学で学ぶことも不可能ではない。

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