4
「兄ちゃんおっはよー!」
その下の弟は
正直、ちょっとうんざり。
どうせ生むなら、妹にしてくれればよかったのに。
三姉妹なら家の中も花園のように甘い匂いに包まれ、華やかだったに違いない。パンツも穿かず走り回る弟達の裸なんて、もう見飽きた。
俺はあまりの騒々しさに、コーヒーを一口だけ飲み立ち上がる。
「涼! ちゃんと食べなさい! 朝御飯抜いたら、頭が働かないだろう。ただでさえ働いてないんだから。シャンとしなさいよ」
頭が働いてなくて、悪かったな。
それってバカだって遠回しに言ってるのか?
これでも四人兄弟の中で一番成績はマシだし。
一応、名門私立大に通ってんだからな。
「いらねぇ」
「いらねぇじゃないの! まったく口のきき方が悪いったらありゃしない! 誰に似たんだか。さっさと食べなさい。こらっ! 恵、それ兄ちゃんのでしょ!」
口のきき方が悪いのは、お袋に似たんだよ。
「……だからぁ、いらねぇの! 俺の分全部恵にやるよ」
「やった~!」
「だったら兄ちゃんの分は、次男の俺がもらう!」
「なんでだよ。僕がもらったんだよ」
弟達のバトルを横目で見ながら、俺は足早に家を出た。
◇
大学は家から自転車で十五分、交通費を浮かすために自転車で通学可能な大学を選んだ。
自転車を駐輪場に停めるとバイクが勢いよく突っ込んできた。自転車にあたるスレスレの距離だ。
「あぶねぇな」
「オッス! 涼おはよっ!」
金髪ロン毛の
「『おはよっ』じゃねぇよ! バイクで突っ込んだら危ねぇだろ。構内で俺をひき殺す気か」
「おう、わりいわりい。ちょっとあたったくらいじゃ人間は死なねーよ」
「お二人さん、朝っぱらから何揉めてんの?」
「こいつがさ、危ないったらねぇの。おい、田多聞いてる?」
「あっごめん……。何だっけ? 聞いてない」
「聞いてねぇのかよ」
だと思った。田多は掴み所のない軟体動物みたいな男だから。
上戸が俺と田多の間に割り込み、二人の肩を組む。
「まっいーじゃん涼、講義始まるぞ。早く行こうぜ」
「お前が、悪の根源だろーが」
「根源? それって
上戸が俺を見てヘラヘラと笑った。
本気とも冗談ともわからないセリフ。
こいつ、どこか憎めない奴なんだよね。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます