第10話 木星圏に到着し部隊再編が始まる。


我々の乗っている強襲揚陸艦ガンビアベイはドック艦で修理された。しかしながら機関部などの重要部分は本格的な修理が必要であるとのことで、応急的に自力航行が可能な程度までの修理とされた。そして我々の船は傷病兵を後送する病院船メディシンランドと護衛のコルベット8隻の艦隊に合流し木星圏に進路を向けすすむことになった。

修理の結果、機関部や居住施設中でも生命維持系統である空気再処理装置や再生水処理装置の修理により。ある程度使えるまでは治ったけれど、居住施設破損はどうにもならず特に厨房や合成食料生産装置は全損であったので、非常用食料を食っている状況であったりする。それもあと数日の辛抱である。なお、けが人はすべて病院船に送られ我々の船内は閑散としていた。まあ、艦隊で行動可能な人材はラインオフィサーでは私だけ残りはテクノオフィサー連中が40人と帝国の傭兵だったカチューシャたちが30名といった状況で戦闘用機材はゼロ、兵装は全損という状況であったりする。

幸いというべきなのかどうかわからないがケイ曹長に妊娠が判りそれが判った時には部隊は大いにめでたい状況となったわね。まあ、彼女の夫となる人間は先の戦闘で戦死したということだから生まれてくる子供は父親無の子供ということになるようだ。まあ、彼女は妊娠が判った時点で第三種傷病兵ということで除隊が決まったわね。

私たちの部下というべきなのかわからないけれどマリーたちもケガはしているけれど命に別状もないし怪我が治れば第一線に復帰は可能との事だけどね。まあ、こんなごみ溜め部隊には相応しくない人たちだったけれど彼女たちもなかなかの戦士だったわね。それが機材の性能故なのかどうなのかわからないけれど、結果的に言えば新兵こそ最新鋭で高性能な機材に乗るべきと私は確信したね。まあ、それにより生き延びる確率が上がるそうすれば新兵も場数を踏めばベテランになるしね。

まあ、昔から言うけれど生き延びさえすればベテランになるからね。勇者ではなくてもいい逃げ回ろうが震えようが生き延びればいくらでもいいことができるからね。

そして我々はどうにか木星圏に到着したのはいいけれど、正規の軍ドックは修理待ちの艦船で一杯で我々のような独立部隊の修理は後回しにされてしまっていた。

そのやり取りが切れて私はいう。

「ちくしょーめ。ここでも差別かよ。聞いてあきれるぜ」

「おいおい。随分と荒れておるなぁランよ」

「あ。爺さんか。そりゃあな。同じ軍隊でこうも差が開いているとなぁ。独立部隊はあとでだってさ。ちきしょーめ。さすがのマッコイ爺さんも艦船の修理拠点はむりだろうしなぁ」

「あるぞい」と爺さん。

「本当かよ。そりゃあいいね。と言いたいけれど高いだろうしなぁ」

「まあ、それなりに値は張るなぁ。まあ、紹介する程度ならできるぞい」

「そうかそれは頼む」

「毎度」

ということで数時間後一隻の大型タグボートがやってきていた。

どうやらマッコイの紹介で来たジャンク屋連合のタグボートだそうだ。

「あんたがここのボスか」

「まあ、ボス代行だけどな。本物のボスは先の戦闘でみんな死んじまったよ」

「そうか。まあ、とりあえずこの船を見せてもらうぜ」

ということでドック船に曳航されて近くのステーションにある工業用ドックに入渠しそこで徹底的な検査を受けたけれど結果は惨憺たるものだったわね。

「嬢ちゃんよ。こいつは新造したほうが安くつくぜ」

「やっぱりか。まいったね~。上官はみんな死んじまったしなぁ。まあ、後任の司令がどうなるかだよなぁ」


「まあ、そうだよな。あんた。あのマッコイとはどういう関係だ。見たところ愛人でもないし」

「まあ、あの爺さんは物資の調達でとても重宝しているけれどね。ところで爺さんはマッコイ爺さんとは長年の付き合いのなのか」

「まあ、そうじゃ。若かりし頃からじゃな」

「そうかそれは良いね」

とまあ、そんな話をしていると後ろから呼びかけられた。

「君が瑞雲嵐曹長でまちがいないか。私はこの部隊の隊長として配属された新城直衛階級は少佐である。隣にいるのは副官の藍沢紗香中尉とユリーシャ・デクチャレフ中尉である。早速だがこの部隊の状況を知りたい」


「判りました。少佐。現在の状況はこのような状況であります」

と言って私は艦隊壊滅、MS、AT隊も殲滅状態そして船も全損状況であるという状況を伝えた。

「そのような状況でよくまあ生き延びさせたな。前任の隊長はどうした」

「その先の戦闘で生命維持装置を破壊され戦死なされました。残りの士官も負傷し後送され、現在ラインメンバーは私とカチューシャ隊のメンバーだけであります」

「カチューシャ隊だと知らん名前だがそれはなんだ」

「その部隊は外宇宙地帯で遭難した船を救助した際に傭兵部隊であったため前任の隊長が現地徴兵という形で部隊に配属された部隊であります」

「そうか。そこまで困窮していたのか。確か佐藤大輔中佐であるな」

「そうでありますが大尉と聞いておりますが」

「うむ。先の戦闘による戦死で二階級特進で中佐となったのだ覚えておけミズモ准尉。君も今までの戦功と試験機の運用データ提供による協力で昇進となった」

「ありがとうございます。隊長。それでは船の手配などを如何致しましょう」

「む。君がこのドックのボスかね」

「そうじゃよ。わしはグレイファントム。まあ、木星圏と地球圏を70年間往復した老人じゃよ。マッコイとは竹馬の友でもあるがな。あんたが隊長ということはどうするかね。安くしておくがね」

「む。ならば、その船の目録というものを見せてもらおうか」

「ひひひ。話が早くて助かるわい。これじゃよ」

そしてリストと映像データが乗っている端末を渡された隊長はいう。

「すごいな。戦艦からコルベットまでなんでもあるんだな」

「そうだ。まあ、値段はそれなりに張るがな」

「しかし、こちらの資産ではいい船はむりか」

その相談に私は意見具申をする。「ならば船体やパーツを購入しドックを借りて我々で改造、建造を行うというのはどうでしょうか。少なくても機材や人材の補充がなければ部隊は動きませんし、補充したとしても再編成の訓練も必要となりますので」

それを聞いた隊長は言う。

「なるほど。もっともな意見だな。ところで爺さん。ツケは効くのか」

「もちろんじゃと言いたいところだが、生憎と一見の客と軍人には無理じゃな」

「まあ、そうだろうな。参考になった。おい。真田、大山、瓜畑よ。君たちの開発した新型エンジンの搭載艦が決定したぞ」

大山と言われたチビ眼鏡の男が言う。

「ほんとうかね。新城よ」

「そうだ。君たちが開発したタキオン粒子圧縮波動エンジンの実証試験のベースが決まったぞ」

そして真田という技術士官も言う。

「そうですかと。なるとここを工廠、拠点としてということになりますな」

「そうだ。爺さんよ。ここを我が部隊の拠点とするがどうだ。金はある」

「つまり我々を抱き込む算段かね」

「そうだ。どちらにしても修理拠点はひつようだからな。でだ。そこの自走ドック船はスクラップなのか」

「そうじゃ。先の襲撃でスクラップにされちまってな。中の乗組員は皆死んだよ。で、俺たちがサルベージしたのはよかったが解体してとかんがえていたところじゃよ」

「そうか。こいつを買わせてもらう。ついでにもう一隻そこにある大型戦艦もかおうかね」

「じゃが。エンジンなどはないがいいのか」

「構わん。その代わり相談なんだがそこの廃棄コロニーはそちらの名義なのか?」

「そうだな。まあ、木星圏開発用の初期のコロニーじゃったが数年前にバイオハザードをやらかして住人がすべて死んじまったコロニーじゃよ。まあ、ガンマ線、X線、熱線処理により滅菌処理は行われておるが住む奴がおらず解体する予定じゃったがな。まあ、軍が拠点として徴用するならそれはそれでありじゃよ」

「そうかたすかる」

そして新城はマッコイに言う。

「でだ。爺さん。今から言う工作機械をちょうたつしてもらおうかね。金は前金でこれだけ出す」

と言ってものすごい金額のアースユニオン銀行発給の小切手をマッコイに渡していた。

「そりゃあ大変な金額じゃあ。こうしちゃあいられん。ラン。お前小型艇の操縦できたよな」

「ええ。できますが」

「じゃあ頼む」

「というのですが隊長いいのかしら」

「構わん。お前も地球圏に戻れ。休暇というよりもMS隊の再編として機材の選定を行え補佐としてユリーシャをつける。あとカチューシャ隊の連中も同行させろ。MSにしろAT隊にしろどちらにしても機種変更訓練が必要になるからな」

「了解しました」

ということで私はMS隊の再編成を兼ねて地球圏にもどることになったわね。

で、高速輸送船団の一隻に便乗した私達は地球圏に到着まで作業用ATに乗って保守作業任務にあたっていたわね。

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