第47話 サプライズ
「あーえっと、春ちゃん、おはよう」
「ふん……」
音楽室で自主練を終え、朝のホームルームが始まるギリギリの時間に教室に入ると、私の隣の席からりょうたが声をかけて来るが、不機嫌なのをアピールしながら無視してやった。記念日のこと謝ってくるまでは絶対許してやらないから。
「春ちゃん…」
「………」
「ねー」
「…….…」
「大好き」
「私も…あっ……」
はめられた。それはずるい…りょうたに大好きって言われたら反射的に私も。と答えてしまうのをりょうたは知っているはずなのに…はめられた。
私がりょうたの大好き。に私も。と返したのを聞いて、私とりょうたのやり取りを心配そうな表情で見ていたクラスメイトたちは一斉に笑い出す。恥ずかしい……
「なんなの?喧嘩してたんじゃないの?」
「結局バカップルなのね…」
とか、教室中からいろいろな声があげられてめっちゃ恥ずかしかった。私がりょうたを睨むとりょうたはごめん。とジェスチャーで謝ってきた。それよりも前に謝らないといけないことはないんですかねぇ?
「えっと、春ちゃん、ごめんなさい」
授業が終わり、部活が終わり帰り道、私が最後のチャンスだよ。と言うように自転車を押しながら歩いているとりょうたが謝ってきた。
「何に対してのごめんなさい?」
私は自転車のスタンドを立てて自転車から手を離してりょうたと向き合う。
「えっと、朝1番に今日までありがとう。って言えなかったから…今日、1ヶ月目の記念日だよね?」
「やっぱり忘れてたんだ」
「忘れるわけないじゃん。えっとさ、予定だと今日、うちにお泊まりのはずだからさ、帰ったらサプライズでプレゼント渡したくてさ……だから、えっと、その、ごめん。そうだよね。忘れてると思われちゃうよね。その、バカでごめん」
「いいよ…」
「え?」
「そういうことなら…許す…」
やっぱり、朝1番にりょうたとお祝いしたかったけど、りょうたは私を驚かせようとサプライズの準備をしていてくれた。それが嬉しかった。その事実だけで私は幸せだった。
「それにしてもりょうたもプレゼント用意してるなんてね」
「え?」
「私も用意してたんだ。今からさ、お泊まりの荷物取りに行くからプレゼントも持ってくるね。りょうたの部屋でプレゼント交換しよー」
「う、うん。春ちゃん、ありがとう」
「こちらこそありがとう」
まあ、そうだよね。りょうたに限って大切な記念日を忘れるわけないよね。なのに私は焦って不機嫌になって、なんだか恥ずかしいや。私はりょうたと手を繋いで片手で自転車を押しながら家に帰る。そして荷物を持ってりょうたと一緒にりょうたの家に向かった。
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