第45話 呼び方
翌日、私はりょうたに起こされる。かなりギリギリの時間まで意地でも眠るスタンスの私を、嫌な顔一つせずに起こしてくれて、私が起きると笑顔でおはよう。と言ってくれるりょうたが大好き。
「りょうた、お待たせ…」
私が制服に着替える時、りょうたは必ず玄関に移動する。別に見られてもいい…のに……
「うん。じゃあ、行こうか」
りょうたに差し伸ばされた手を私はそっと取り、りょうたと手を繋いで歩き出す。
そして、学校に到着して、私とりょうたがクラスの教室に入ると、教室にいた人全員の視線が私とりょうたに集まった。
「なんだ、結局仲直りしてんじゃん」
「喧嘩したって聞いたから焦ったよ…」
「バカップル」
などなど、クラスメイトから散々な言われようで、私とりょうたはなんか恥ずかしかった。クラスだけでなく、部活でも同じような扱いをされて、私はフルートパート、りょうたはクラリネットパートの子にめちゃくちゃ心配されていた。
「なんか、今日一日、めっちゃ疲れた…」
「あはは、いろんな人たちに心配されてたね…」
りょうたは笑いながら言うが笑いごとじゃないよ恥ずかしい…なんで、他人の恋にそんなに興味を持つのか理解できん。
「私とりょうたが別れるわけないじゃん…」
ボソッと呟くと隣を歩いていたりょうたの顔が赤くなる。
「僕も、絶対に春ちゃんと別れたくない」
嬉しいけど、面と向かって言われるとちょっぴり恥ずかしい。
「あれれ、そういえばいつの間にちゃん付けに戻ったのかなぁ?私、昨日呼び捨てで呼ばれた気がするんだけど〜」
「それは…ごめんなさい…」
「もう一回、春って呼んでみて」
「う、うん。えっと…は、春……」
私もりょうたも顔を真っ赤にする。やばいはこれ…
「えっと、やっぱり、今まで通りにして」
「う、うん。わかったよ。春ちゃん」
うん。やっぱりこっちの方が落ち着く。呼び方なんて、あまり気にしなくていいか。呼び方が何であれ、りょうたは私のことをきちんと好きでいてくれるのだから。
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