第42話 喧嘩
「なんでついてくるの!?」
「春の家に荷物あるから取りに行くだけ。荷物取っておばさんに挨拶したらすぐ帰るし」
「あっそ」
部活が終わり、家に帰る途中、それ以外会話することなく家まで歩いた。私の後ろを少し離れて歩くりょうたを見て私は苛立ちを感じていた。にも関わらず、無意識的に片手を広げてそっと横に差し伸ばすような仕草をしてしまった自分にも苛立つ。
家に帰り、私はお兄ちゃんの部屋に閉じこもった。今はお兄ちゃんは下宿していていないので最低限の物しかない空き部屋になっていた。しばらくしてりょうたがそろそろ帰ったと思うタイミングで私の部屋に戻るとりょうたとりょうたの荷物はなくなっていた。
「ばか…」
私は家の中にりょうたがいないかを確認する。
「あれ、春、今日はりょうた君の家にお泊まりしないのね」
「うん」
「もしかして喧嘩したの?」
「う、うるさい」
お母さんにそう言われて苛立つ。お母さんの反応的にりょうたはもう帰ったみたいだ。スマホの画面を確認してもりょうたから一言も謝罪の言葉が届いていない。
「もうしらないっ」
私は苛立ちに身を任せてりょうたのLINEをブロックしてスマホの電源を切り布団の中に潜った。
………………………
初めてだなぁ。と不意に思った。りょうたと付き合うことになってから、りょうたと一緒にいない時間は今が初めてのような気がする。
そう考えた時、私はかなり寂しさを感じた。
「こんな時間にどこ行くの?」
「さんぽ」
「スマホは持ってる?」
「うん」
「今日帰らないなら連絡入れなさいよ」
「はぁ?か、帰ってくるし!!」
玄関前でお母さんとそんなやり取りをして私は家を出た。別に、適当に散歩するだけだし、適当に歩いていた。でも、何故か片手が落ち着かない感じがした。
「「あっ……」」
私の家とりょうたの家の中間地点くらいの場所で私とりょうたは目を合わせた。
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