第41話 もめごと




水族館デートが終わり数日、水族館デートが終わってからもずっとお互いに離れようとせず、常にどちらかがどちらかの家にお泊まりする日々を繰り返して喧嘩することもなく幸せなカップルライフを楽しんでいた。のだが……


「ねえ、りょうた、喧嘩売ってるの?」

「は?これは僕、悪くないよね。春ちゃんが悪いよね?」


私とりょうたはお互いに相手を睨みつけた。私とりょうたが揉めている雰囲気を感じて周りが痴話喧嘩!とか言って盛り上がっているが、今はそんなことどうでもいい。


基本的に付き合う前から仲がいい私たちだが、月に一回程度、ある理由で本気で揉める。付き合ってからこうして揉めるのは初めてなので周りからも注目されているみたいだ。どうでもいいことで揉めた時は基本的にりょうたが諦めてくれるのだが、どうでもよくないことで揉めた時はりょうたも結構、交戦的だったりする。


「ここは私のソロだからあんたたちは少し音量下げろって言ってるの」

「だから、ソロパートは目立てばいいってものじゃないでしょう。僕たちが音量下げたら低音と高音のバランス取れなくて曲が死ぬんですけど」


部活の練習中、フルートでソロパートを吹く私が少し邪魔に感じていたクラリネットパートに文句を言いに行ったところクラリネットパートのパートリーダーであるりょうたにそう反論された。


先程のある理由…それがこれだ。私もりょうたも楽器はそれぞれのパートで1番上手いし誇りと理想がある分、揉める時はお互い本気で揉める。


「りょうた、いい加減にしとけよ。私怒らせたら怖いって知ってるよな?」

「春ちゃんこそ、いい加減にしなよ。ソロパートやるからって調子乗りすぎ」


と、私とりょうたがお互いに対して本気で不快感を示し始めたのを見てさすがにまずい。と感じたのかクラリネットパートの人たちが私とりょうたを遠ざけようとし始める。


「とりあえず、そこ、何とかしてよ」

「変えるつもりないから」


一度、揉め始めたら私もりょうたも本当に頑固だ。いつもどうやって仲直りするのかわからないくらい本気で喧嘩する。苛立った私は何を言い出すかわからない。そんな私にりょうたはなんて返すかわからない。だから、付き合ってから今日みたいに本気で揉めるのが怖かった。


「あっそ、じゃあ、あんたなんてもうしらないから!」

「あっそ、僕だって春ちゃんのこともうしらないから!」


りょうたの言葉を聞きながら私は怒りに身を任せて勢いよく教室の扉を閉めてフルートパートが練習している教室に戻る。






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